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イージス艦2隻の新造 防衛政策の全体像が先だ

 政府が導入を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に代わる案が固まった。弾道ミサイル防衛を主な任務とするイージス艦2隻を新たに建造するという。

 戦闘機や潜水艦からの攻撃に対処する機能をどのぐらい持たせるのかなど、詳細は今後検討する。搭載するレーダーや武器管制システムも決まっていない。

 導入費用は1隻2400億から2500億円超で、陸上イージス1基に比べて2割以上高い。具体化に従ってさらに膨らむ可能性があるうえ、30年間の経費総額は概算すら示されていない。

 導入の目的は、北朝鮮の弾道ミサイルから「24時間365日、切れ目なく防護する」ことだった。海上案への回帰でそれは難しくなる。イージス艦は荒天に弱く、補給や整備のために任務を離れて港に入る期間も必要だからだ。

 既存のイージス艦をミサイル防衛から外し、中国を念頭に東シナ海などでの警戒・監視に当たらせることも十分にはできなくなる。

 イージス艦は、1隻で約300人の乗組員が必要になる。海上自衛隊は人手不足が深刻で、乗組員確保のめどは立っていない。

 陸上イージスは、トランプ米大統領が高額な米国製装備品の購入を迫る中、政治主導で導入が決まった。しかし、ずさんな候補地選定や地元への誤った説明で迷走した末に断念に追い込まれた。防衛省が自衛隊の現場や米国と十分な議論と検証を重ねずに配備を急いだのが原因だった。

 防衛政策の大きな失敗にもかかわらず、検証は不十分なままだ。白紙撤回する選択肢もあったはずだが、防衛省は米国側との契約を解約した場合の違約金を懸念し、既に購入を決めたレーダーなどを洋上で活用する方針だ。

 代替策も、年末の予算編成までという「期限ありき」で結論を急ぎ、方向性を決めた。どこまで詰めて妥当性を検討したのか疑問が残る。

 周辺の安全保障環境が厳しくなる中、日本の防衛構想をどう描いているのか。新造するイージス艦2隻をその中でどう位置づけるのか。全体像を示さないまま、高額な防衛装備品の調達を進めることは許されない。

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