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#最後の1年

新型コロナに揺れる学生スポーツ界。最高学年の選手は無念や戸惑いを抱きながら「最後の1年」を過ごしています。

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#最後の1年

託されたエース番号、日大QB林 乗り越えた4度の試練、投じた19本の魂のパス

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甲子園ボウル第2クオーター、前線にパスを送る日大のQB林大希=阪神甲子園球場で2020年12月13日、藤井達也撮影
甲子園ボウル第2クオーター、前線にパスを送る日大のQB林大希=阪神甲子園球場で2020年12月13日、藤井達也撮影

 翼は折れても、心は折れぬ。大舞台を前にまたしても襲ってきた試練に立ち向かい、19本のパスに魂を込めた。「フェニックス」(不死鳥)を愛称に持つ日大アメリカンフットボール部の司令塔、4年生QB林大希(21)。3年ぶりに「毎日甲子園ボウル」にたどり着いた時、その右肩は既に限界を超えていた。

「林は出場できるのか」

 阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で13日に東西大学王座決定戦として行われた関学大との頂上決戦。2018年5月の両校の定期戦で日大が起こした「悪質タックル問題」以来となる対戦で注目を集める中、試合の行方を占う上で最大の焦点となったのは、「林は出場できるのか」だった。

 2週間前の11月29日、桜美林大との関東大学リーグ優勝決定戦。「腕の1、2本折れても勝つ」と気合をみなぎらせた林は、それまで封印していた自らのランによる攻撃を解禁する。だが、7点を追う第2クオーター終盤、右サイドを走った際にタックルを受け、右肩から落ちて負傷退場した。チームはその後、同学年の川上理宇(みちたか、22歳)らRB陣の活躍で逆転勝ちし、甲子園ボウルの関東代表に決まった。

 診断は右肩鎖関節の靱帯(じんたい)断裂。心配した母早苗さん(50)から「次の試合に出てほしくない。それでも出る?」と電話がかかってきたが、「出る」と即答し、治療に専念した。林にとっては、実に4度目の試練だ。スポーツ推薦で「高校日本一」3度の強豪・関大一高(大阪)に進みながら、練習に没頭するあまりに授業がおろそかになり、進級できずに退学した最初の試練。弱小アメフト部だった大阪府立大正高を経て進んだ日大では1年生ながら最優秀選手に選ばれる活躍で甲子園ボウルを制したが、翌年に起きた「悪質タックル問題」で公式戦出場停止と降格処分を受けた2度目。さらに新型コロナウイルスによる今春の部活動自粛。これまでは壁を乗り越えてきた。

 ほとんど練習ができないまま甲子園ボウル前日、会場での公式練習を迎えた。後に明かした本心は「出られるか分からなかった」。しかし、相手に最大限の脅威を与えようと強気の姿勢を貫き、記者会見では「出るのか出ないのか、コンディションがいいのか悪いのか、明日楽しみにしといてください」と不敵な笑みを浮かべた。練習では報道陣に公開された冒頭15分には姿を見せず、非公開になってから練習に参加するなど情報管理を徹底した。

託されたエース番号

 決戦の日、フィールドで日大が試合前練習を始めた時、林の姿はなかった。ようやく…

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