メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ニッポンへの発言

キーワード 柳美里の全米図書賞=中森明夫

全米図書賞・翻訳文学部門に輝いた「JR上野駅公園口」の英訳版と日本版を持ち、笑顔で喜びを語る柳美里さん=南相馬市小高区東町のフルハウスで11月19日、高橋秀郎撮影

 柳美里が全米図書賞を受賞した。これで彼女がノーベル文学賞候補となるのは確実だろう。同賞はアメリカでもっとも権威ある文学賞だ。今年のノーベル文学賞は米国の詩人ルイーズ・グリュックが受賞したが、彼女もまた2014年に全米図書賞を受賞している。

 受賞作は『JR上野駅公園口』。東京五輪の前年に出稼ぎで上京した男が、やがてホームレスとなり、上野駅周辺を彷徨(ほうこう)する。時代と風景と男の内面が多声的に交響する――駅が起点の物語『マンハッタン乗換駅』(ドス・パソス)や公園/広場の物語『ベルリン・アレクサンダー広場』(アルフレート・デーブリーン)を想起した。中編ながら、大きな構えの傑作小説だ。

 再度の東京五輪が延期となった今年、柳が同作で国際的評価を得たことは感慨深い。彼女の祖父は80年前、1940年に開催されるはずだった“幻の東京五輪”の有力候補ランナーだ。36年のベルリン五輪で男子マラソン金メダルに輝いた孫基禎の友人である。孫も、柳の祖父も朝鮮人でありながら、併合下に日の丸をつけて走った。96年、柳は韓国で孫と会見、後の感動的な交流は近著『国家への道順』に詳しい。同書で彼女は「オリ…

この記事は有料記事です。

残り1139文字(全文1634文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. ファミマ・お母さん食堂に異議 声上げた高校生に「慎吾ママ」生みの親がエール

  2. GoTo客受け入れ8宿泊施設で5人以上感染 10月下旬までに 情報公開請求で判明

  3. 二つの支持率が占う菅政権の今後 政権運営力低下を無情にも示すその「差し引き」

  4. 新型コロナ 本当にデタラメなのか 河野太郎行革相が批判したNHKワクチン報道を検証した

  5. #自助といわれても 気づいたら全財産103円 42歳女性が「見えない貧困」に落ちるまで

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです