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「アラブの春」から10年 長い混乱を終息させる時

 中東で「アラブの春」と呼ばれる大規模な民主化運動が起きてから10年となる。独裁政権の復活と長引く内戦で、市民の期待はしぼみ、混乱の「冬」は終わる気配さえ見えない。

 多くのアラブ諸国では当時、長期独裁体制の下で人権が抑圧され、表現の自由が制限されていた。公正な選挙もほとんど行われていなかった。

 チュニジアの田舎町で、野菜の街頭販売をしていた男性が焼身自殺したのが2010年12月。警察に商品を没収されたことへの抗議だった。これをきっかけに反政府デモやストライキが全土に広がり、ベンアリ独裁体制が崩壊する。

 勇気づけられたアラブの市民はSNSを駆使して、大規模反政府デモを起こす。エジプト、リビア、イエメンで独裁政権が倒れ、シリアでは内戦となった。

 人々は当初、民主主義を享受できると考えたが、期待は裏切られた。エジプトでは12年、イスラム主義組織が選挙で政権を握ったが、国軍が13年、クーデターで政権を倒して独裁政治が復活した。

 リビアでは国が東西に分裂し、両武装勢力による内戦となった。イエメンではイスラム教スンニ派の暫定政権軍とシーア派の反政府武装組織で衝突が続いている。

 シリア内戦では一時、過激派組織「イスラム国」(IS)が一部地域を支配するほど混乱は深まった。内戦の犠牲者は約40万人、難民は約660万人に上る。

 比較的民主化の進んだチュニジアでも若者の失業率は高く、反政府デモが頻繁に起きている。

 混乱の要因は、宗教・宗派や地域による対立などさまざまだ。それに加えイランやトルコ、サウジアラビアなどの地域大国や欧米、ロシアなどが武器輸出や資金援助で介入している。

 内戦に乗じて、地域での影響力拡大を狙う各国の姿勢が、事態を複雑化させている。市民の被害を広げている責任は重い。

 トランプ米政権はアラブの独裁政権に肩入れしてきた。バイデン次期大統領は国際協調の重要性を訴えている。

 米国の政権交代を機に、関係各国はそれぞれの思惑を捨て、この地域の混乱を早期に終息させるため協調すべきだ。

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