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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「夏草やつわものどもが夢の跡」をもじった…

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 「夏草やつわものどもが夢の跡」をもじった「この雪に馬鹿者どもの足の跡」という江戸川柳がある。雪が降れば、いさんで雪見に出歩く物好きをからかった句で、昔の江戸は今よりも雪の日が多かったようだ▲雪景色の浮世絵や雪見の名所の評判がそれを示している。実際に江戸時代後期の気候は寒冷で、隅田川の結氷という記録もある。ただ、雪にはしゃいだ江戸の人に対し、雪国の人が豪雪に苦しみ、恐れたという対比は今昔変わらない▲越後の人・鈴木牧之(すずきぼくし)が、初雪が来れば喜ぶ江戸の人と、これからの雪中生活を思う雪国の人を比べ「楽と苦と雲泥のちがいなり」と記したのもよく分かる。さて雪のシーズンも始まったばかりなのに、早くもドカ雪が雪国を襲っている▲列島上空への強い寒気の流入により、まだクリスマスも先なのに日本海側の地方や関東の山沿いでは記録的な大雪に見舞われている。群馬県みなかみ町や新潟県湯沢町では、24時間の降雪量がそれぞれ観測史上最高を記録したという▲交通への影響や停電の被害も各地で出ている。きょうも降雪は続くというから、屋根からの落雪や雪崩への警戒も必要だろう。例年ならクリスマスや年末年始寒波が話題となるが、雪国の人も驚く師走半ばの記録的寒波の急襲である▲「雪は天から送られた手紙」とは氷雪の研究で知られた物理学者、中谷宇吉郎(なかや・うきちろう)の言葉である。シーズンのっけからのドカ雪も、荒々しさを増す地球規模の気候変動にまつわる天からの消息なのかもしれない。

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