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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「ベツレヘムの星」とはイエスが誕生した時に輝き…

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 「ベツレヘムの星」とはイエスが誕生した時に輝き、東方の3賢人を呼び寄せた星だ。「クリスマスの星」ともいうこの星が何だったかは諸説あるが、天文学者のケプラーは木星と土星の会合だと推定した▲紀元前7年のうお座での2惑星の接近が、それだという。うお座はユダヤ教では神聖な星座で、木星と土星は半年に3度接近を繰り返した。占星術師でもあったケプラーは、それを特別な啓示とみたのだ(斉藤国治(さいとう・くにじ)著「星の古記録」)▲ただこの時の接近間隔を計算すると1・0度程度で驚くような大接近でもない。それに対し今度の木星と土星の大接近はわずか0・1度、見かけの満月の直径の約5分の1の間隔に近づく。視力次第では、一つの天体に見えるという▲日本では21日と22日の日没後、南西の低い空に見える約400年ぶりの木星と土星の大接近である。明るい方が木星、暗い方が土星で、天体望遠鏡でのぞけば、木星やその衛星、輪のある土星とが一望できる天体スペクタクルとなる▲中国や日本の古天文学では惑星の接近を「合」という。うち間隔が0・7度以下の大接近は「犯」と呼ばれた。16世紀までの古文書には350件以上もの合犯が記録され、昔の人が天下の安寧(あんねい)にかかわる天変と見ていたことが分かる▲新型コロナの感染拡大が止まらない世界で、ケプラーが説いた「クリスマスの星」の再来となる。次の大接近は60年後になるそうな。「2020年」という年を人々の心に刻みつける夜空のめぐり合いである。

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