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全国高校駅伝2020

2020年12月20日に京都市で開かれる男子第71回、女子第32回全国高校駅伝競走大会のページです。

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宮崎・小林 九州豪雨にのまれたふるさと 避難した家族に表彰状を 全国高校駅伝

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都大路の2区をイメージして走る小林の高木晃瑠選手=宮崎県三股町蓼池の旭ケ丘運動公園陸上競技場で2020年12月13日午前10時54分、塩月由香撮影 拡大
都大路の2区をイメージして走る小林の高木晃瑠選手=宮崎県三股町蓼池の旭ケ丘運動公園陸上競技場で2020年12月13日午前10時54分、塩月由香撮影

 男子第71回、女子第32回全国高校駅伝競走大会(毎日新聞社など主催)が20日、京都市のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)を発着点に行われる。男子宮崎県代表の小林高校で2区を走る予定の高木晃瑠(たかき・ひかる)選手(3年)は7月の九州豪雨で実家が浸水。今も避難生活を続ける家族やふるさとへの思いを胸に都大路を駆け抜ける。

 豪雨の約1カ月後、実家の前で立ち尽くした。壁も床板もはがされ、骨組みが残るのみ。片隅に茶色いシミだらけになった数枚の表彰状を見つけた。「ごめん、他は残ってなかった」。父はすまなさそうに言った。積み重ねてきた駅伝の思い出の証しはほとんどが流された。ふるさとを確かに濁流が襲ったのだと実感した。

 九州豪雨で死者20人を出した熊本県人吉市の中心部・宝来町で育った。子供会でラフティングをするなど球磨川は身近な存在で、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため学校の寮が一時閉鎖し、実家に戻った3月も地元の仲間と川沿いを走った。起伏のある坂道が多いこの街で鍛えてきた。

 子供の頃から走るのが好きで、地元の中学卒業後は隣県の伝統校・小林へ。2階建ての実家1階リビングには表彰状数枚が額装で飾られ、残りは仏壇近くで大切に保管。家族にとっても誇らしい宝物だった。

 7月4日午前、練習中に上原将平監督に声を掛けられた。「人吉で水があふれているらしいぞ」。冠水程度と思った。昼に寮に戻りテレビを見て言葉を失った。見慣れた橋は流され、近所の家は屋根まで茶色い水につかっていた。部員はスマホを持っていない。寮の公衆電話から何度もかけ、夜、母にようやくつながった。1階はほぼ水没。両親は仕事で外出、家にいた祖母と小学4年の弟は間一髪で避難したと知った。

 「こっちは大丈夫」。何度も繰り返す母の声に、いま自分ができることは駅伝だけと言い聞かせ、練習に打ち込んだ。そのかいもあって県予選は2区区間賞で、3年ぶりの都大路切符に貢献。会場に駆けつけた家族が喜んでくれるのがうれしかった。

 中学で駅伝を始めて以来憧れ続けてきた都大路。「良い走りでチームを、家族を、ふるさとを喜ばせたい」。実家の修復は進み、年末には家族が避難先から戻る。リビングに飾る真新しい表彰状をつかみにいく。【塩月由香】

【全国高校駅伝2020】

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