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新型コロナのワクチン 安全と安心の確保全力で

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 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に向けた審査が日本でも始まる。米ファイザー社が厚生労働省に特例承認を申請した。

 既に数カ国が使用を認め、米英などでは接種が始まっている。だが通常の手続きを簡略化しており、想定外の副作用もありうる。国内の審査は、安全性を最優先に進めるべきだ。

 ワクチン接種は、病原体と闘う抗体を体内で作らせて感染を防いだり、症状を軽くしたりする。

 ファイザー社の製品は、ウイルスの遺伝情報の一部を体に入れる新型の「遺伝子ワクチン」だ。短期間で大量生産できる半面、過去に承認事例がない。各国政府は臨床試験の結果を踏まえ、「安全性への懸念を有効性が上回る」と判断した。

 日本政府は、6000万人分の供給を受けることで合意している。このほかに2種類を確保しており、全体では国民全員に行き渡る規模だ。

 承認されれば来春にも接種が始まる可能性がある。審査と並行して、接種体制の構築が急がれる。

 臨時国会では改正予防接種法が成立した。接種費用を国が負担し、健康被害が出た場合も国が補償費用を肩代わりする。実際の接種業務は市町村や医療機関が担う。

 製品の輸入から保管、分配まで確実に進める仕組みが欠かせない。ファイザー社のワクチンはマイナス70度での保管が必要なうえ、約1000回分単位で届く。近接する医療機関で使い切る手法の確立や、大人数が集まる接種会場の運用も課題となる。

 今回は、任意接種より強い「努力義務」とされている。感染のまん延を防ぐためには、接種者が多いほど効果が上がるからだ。

 だが米英では、接種後に激しいアレルギー反応が出たとの報告が複数例ある。安全性が完全に証明されない限り、「打たない」決断は尊重されなければならない。

 日本ワクチン学会など4団体は、接種記録や接種後の副作用情報をもれなく集約し、素早く安全対策に生かす独自のシステムを構築するよう提言している。

 ワクチンの利益とリスクとを、一人一人が理解して決められるよう、不安や疑問に丁寧に応える仕組みも検討してほしい。

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