連載

みっちん大変・石牟礼道子物語

石牟礼道子さんの伝記です。道子さんのそばにはいつも猫がいました。道子さんの代々の“側近猫”の語りで構成します。

連載一覧

みっちん大変・石牟礼道子物語

/8 海底/1 迎えに来た兄さま=米本浩二

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
=田鍋公也撮影
=田鍋公也撮影

 <土曜カルチャー>

 ◆海底(うなぞこ)

前回までのあらすじ

 石工集団を束ねる水俣の吉田組は放漫経営が災いして破産した。道子の家は「差し押さえ」の処分を受けた。吉田一家は村はずれのとんとん村に移り、かんじん殿たちと親しく交わる。ある日、益田四郎と名乗る見知らぬ少年が訪ねて来た。

 盲目で狂気のおもかさまと孫の道子は一心同体である。おもかさまは放浪癖がある。遊郭の女性らは往来でおもかさまを見かけると、「今日はご気分のよかばいねえ」などと声をかけてくれる。迷子になったおもかさまを連れてきてくれるのも彼女たちである。

 おもかさまを自壊の発作が襲うことがある。往来でわめきちらす。身内の黒猫のオレはからだをすくませるしかない。恥ずかしいし、はためいわくだが、おもかさまだって、好きでやっているわけではなかろう。探しているのだ。投網で魚を捕る漁師みたいに、ここと思う場所に言葉を放って、アタマの奥のソナーに引っかかるのを待っている……。

この記事は有料記事です。

残り1948文字(全文2362文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集