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犬が西向きゃ

国際報道に優れたジャーナリストに贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞した、高尾具成編集委員のコラム。

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犬が西向きゃ

「神の子」に魅せられて=高尾具成

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 ブエノスアイレス・ボカ地区は先月60歳で逝ったサッカーの元アルゼンチン代表で母国の監督も務めたディエゴ・マラドーナさんの故郷といっていい。ラプラタ川河口に面する港町にはタンゴ酒場の外でも踊る市民がおり、その「天才」の名や肖像があふれている。

 一角にあるクラブ「ボカ・ジュニアーズ」の本拠地ラ・ボンボネラ。徒歩で約2時間、10キロほど南で生まれたマラドーナさんは、頭角を現した1981~82年と95~97年、同クラブに在籍した。同年10月30日の誕生日に現役を引退すると、ボンボネラに通い、裸でシャツを振り回しながら一人のサポーターとして声援を送った。98年、私はその存在を探すように観戦に訪れた。急傾斜な客席にチームカラーの青と黄色の波が揺れる。警備員やサポーターに囲まれて競技場を後にしたのはその人だったのか?

 15歳で国内リーグ、16歳で代表デビューを果たし、18歳で迎えたワールドユース選手権(79年)は日本開催だった。母国を優勝に導き、最優秀選手に輝いた。柔らかく懐の深いボールコントロールや跳ねるような瞬発力に圧倒された。82年1月にはボカ・ジュニアーズを率いて再来日し、日本代表と3試合をした。最終戦の前半39分、ボールを受けた「10番」はたぶん4タッチ目で左足を振り抜いたはずだ。20メートルほどあ…

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