全国高校駅伝

世羅、冷静大差守る 男女V呼ぶ区間新(その1) 男子・クロカン鍛錬、脚力磨き

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3区で先頭に立つ世羅のコスマス(右)。左は九州学院の田島=久保玲撮影
3区で先頭に立つ世羅のコスマス(右)。左は九州学院の田島=久保玲撮影

 世羅(広島)が男子は歴代10傑に4チームが入る高速レースを制し、女子は最終5区の大逆転劇で男女同時優勝を決めた。京都市のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)を発着点に20日行われた男子第71回、女子第32回全国高校駅伝競走大会。男女同時優勝は1993年、2019年の仙台育英(宮城)、15年の世羅に次ぎ4回目となった。

 優勝回数を歴代最多の10回に伸ばした男子は、歴代2位の好タイムをマーク。前回優勝の仙台育英が2位で、3位・洛南(京都)の2時間2分7秒は、08年の全国大会で佐久長聖(長野)がマークした2時間2分18秒を上回り、留学生を含まない高校最高記録となった。

 2回目の優勝を果たした女子も全国大会歴代8位のタイム。神村学園(鹿児島)が2位、連覇を狙った仙台育英が3位で、8位の学法石川(福島)が初入賞を果たした。(スタート時の気象▽女子=晴れ、気温9度、湿度67%、北の風1・2メートル▽男子=晴れ、気温9度、湿度61%、東の風1・1メートル)

男子レース経過

 世羅が3区でトップに立ち、そのまま逃げ切った。トップの九州学院と20秒差でたすきを受けた3区・コスマスが区間新の快走で首位に立ち、以降は1位を一度も譲らなかった。2位の仙台育英は5区・小原、6区・堀の連続区間賞などで後半に追い上げたが、最後は13秒届かなかった。3位の洛南は終始3位以内を保つ安定したレース運びを見せた。倉敷は3区・イマヌエルが区間4位の走りで流れをつかみ4位。佐久長聖は終盤に後退し5位だった。

大会新あと13秒

 トラックの最終コーナーを回ると、勝利を確信した世羅のアンカー・塩出が右手人さし指を突き上げた。2位の仙台育英・白井に激しく追い上げられる展開にも、「自分の走りをすれば勝てる」と冷静にペースを制御した。両腕を力強く広げ、歓喜のフィニッシュテープを切った。

 3区・コスマスの区間新の快走で2位に55秒の大差をつけてトップに立つと、後続の4選手も貯金を生かしてリードを保ち続けた。区間賞獲得はコスマスのみだったが、穴もない安定したレース運びが勝因。勝利に貢献したコスマスは、狙い通りの区間記録更新に「ハイペースを保てた。とてもうれしい」と喜んだ。

 世羅の強さを生んでいるのが、学校近くの自然に恵まれたクロスカントリーコースだ。アップダウンの激しい往復約5キロのコースを、週2回ほど走り込んで脚の筋力を養う。さらに未舗装の土手道を活用し、どんなコースにも対応できる力を身につけてきた。

 こうした練習を繰り返すことに加え、塩出は「今年は選手同士でタイムを意識し合い、力がついた」と明かす。今季、5000メートル13分台の選手は留学生を含めて4人。その一人である塩出をアンカーに温存できる選手層の厚さが実現した。

 出場50回目の節目に、大会最多を更新する10回目の優勝。ただ、チームが目標に掲げた大会記録の更新には13秒、及ばなかった。2年生の塩出は「来年こそ大会記録を更新して優勝したい」。都大路の主役を譲るつもりはない。【伝田賢史】

2位でフィニッシュする仙台育英の白井=山田尚弘撮影 拡大
2位でフィニッシュする仙台育英の白井=山田尚弘撮影

仙台育英、意地のギア 逆転狙うも連覇届かず

 「王者」の意地だった。第6中継所。仙台育英の7区・白井はトップと31秒差でたすきを受けるやいなや、トップギアに入れた。

 白井は5000メートルで13分58秒の自己ベストを持つが、トップの世羅・塩出は13分57秒。同等の力を持つ相手に対し、5キロで30秒差を詰めるのは並大抵のことではない。真名子圭監督も「正直ちょっと難しいかな、と思っていた」。最初の1キロ。時計を見ると2分32秒というハイペースだった。2・5キロ地点で約10秒も差を詰めた。

 世羅の緑ウエアが徐々に大きくなるが、そこからが遠い。「疲れて3キロを過ぎてペースが落ちた」。世羅の背中を捉えられなかったが、区間歴代3位の快走だ。真名子監督は「普通なら2位でしのぐ場面。うちの強さを見せてくれた」と涙を流した。

 新型コロナウイルスの影響で、春先に各選手が実家に帰省。活動再開後も練習時間は限定され、記録会や大会の中止も相次いだ。「いろんな人の支えがあった。最低限の姿は見せられたかな」と白井。合計タイムは堂々の歴代6位。どんな逆境にも決して屈しない――。最後まで「王者のメンタリティー」を貫いてみせた。【大東祐紀】

3区で先頭を追う洛南の佐藤=久保玲撮影
3区で先頭を追う洛南の佐藤=久保玲撮影

洛南、日本選手のみ高校新

 2008年に佐久長聖(長野)が記録した日本選手だけの日本高校最高記録を11秒更新した洛南。奥村隆太郎監督が「常に入賞圏内で走れたいいレース」と言うように、7人いずれも粘りを見せた。

 中でも、チームをけん引したのは「留学生と競いたい」と外国人選手が集まる3区を志願した佐藤だ。23分40秒で区間日本選手トップの快走。今秋は中距離を中心に練習し、トップスピードを上げたことが奏功し「一つでも順位を上げられてよかった」と笑みを見せた。アンカーの溜池も踏ん張った。最後の150メートルで倉敷(岡山)の選手が背後まで迫っていることに気付き「フォームがめちゃくちゃになっても負けたくない」と疾走。1秒差で競り勝った。「常に前へ」のスローガンを掲げる。奥村監督は「苦しくなった時こそ前に出る。どの選手もこれができた」。早くも選手たちは「1番になる」と来年の目標を語り出す。この姿勢こそが、強さの源泉だろう。【森野俊】

高知中央が失格 3区、たすき受け渡しミス

 初の都大路は思わぬ幕切れとなった。たすき受け渡しの規則違反で失格になった高知中央。コロナ禍も絡み、野尻育男監督は「浮足立ち、悪い結果になる予感が少しはあった」と悔しがった。

 違反があったのは第2中継所。3区の1年生留学生・グレが45番目で来たチームメートからたすきを受ける際、足が中継線から2区側に出ていたという。大会事務局によると「たすきを受け取る走者は前走者の区域に入ってはならない」などと規定されている。

 ケニア出身のグレはコロナの影響で出国できなくなり、来日が当初予定の春から10月中旬にずれ込んだ。その後も2週間は隔離期間で登校できず、全体練習に参加できたのは県予選前日。予選はぶっつけ本番ながら3区区間新の走りで初の都大路出場に貢献したが、その後の四国地区大会は中止になり「駅伝経験がなさ過ぎた」と野尻監督は言う。責任感の強いグレの性格にも触れ「あれだけ後ろだったので、焦ってたすきをもらいに行ったんだと思う」とおもんぱかった。【北村栞、野村和史】

1区終盤で先頭に立ち、たすきを手に中継所に向かう九州学院の鶴川=久保玲撮影 拡大
1区終盤で先頭に立ち、たすきを手に中継所に向かう九州学院の鶴川=久保玲撮影

ラスト振り切り1区制す 鶴川正也 九州学院・3年

 それまで9キロ以上を走ったと思えない強烈なスパートだった。残り300メートル付近、一騎打ちだった浜松商・尾崎を一気に突き放す。「全力疾走した」。幾多の名ランナーが駆け抜けた都大路の「花の1区」を制した。

 5000メートルの高校日本記録を持つ東農大二・石田が序盤から飛び出した。「いつのまにか石田が前にいて、『あっ、やべえ』と思った」と笑って振り返る。それでも石田が飛ばしすぎと瞬時に判断し、無理に追わずに体力を温存した。その通りにライバルのペースが落ち、先頭争いへ。「ラストは自信があった」。昨年は同じ1区で仕掛けどころを誤り、区間3位。「去年が終わった瞬間から1区をもう一回走りたいと努力してきた」。失敗を大舞台で生かした。

 狙っていたのは昨年、千葉・八千代松陰の佐藤一世(現・青学大)が出した28分48秒の日本選手1区最高記録。わずか8秒届かなかった。「これで(都大路も)終わりなので少し悔いは残るが、来年から大学で駅伝をするので大記録を出せたらいい」。進学先は佐藤と同じ青学大の予定。地元・熊本から次の道に突き進む。【新井隆一】


世羅(広島県世羅町)

 1896年創立の県立校。地元は駅伝大会が盛んで「駅伝のまち」と呼ばれる。主なOBに原晋・青山学院大陸上部監督ら。


男女同時優勝

1993年 仙台育英

2015年 世羅

  19年 仙台育英

  20年 世羅

男子の優勝回数上位5校◇

(1)世羅(広島)  10回

(2)西脇工(兵庫)  8回

 仙台育英(宮城) 8回

(4)小林(宮崎)   7回

(5)報徳学園(兵庫) 6回


男子区間賞と日本選手1位

1区(10キロ)

 鶴川正也(九州学院)    28分56秒

2区(3キロ)

 村尾雄己(佐久長聖)     8分 1秒

3区(8.1075キロ)

 コスマス・ムワンギ(世羅)☆22分39秒

(5)佐藤圭汰(洛南)      23分40秒

4区(8.0875キロ)

 吉岡大翔(佐久長聖)    23分 5秒

5区(3キロ)

 小原快都(仙台育英)、

 内藤一輝(洛南)       8分41秒

6区(5キロ)

 堀颯介(仙台育英)     14分28秒

7区(5キロ)

 山田修人(倉敷)     ★13分58秒

 ※丸囲み数字は順位、☆は区間新記録、★は区間タイ記録


男子歴代10傑◇

 学校      記録        大会

(1)世羅(広島)  2時間1分18秒 ★15年全国大会

(2)世羅(広島)  2時間1分31秒 ★20年全国大会

(3)仙台育英(宮城)2時間1分32秒 ★04年全国大会

(3)仙台育英(宮城)2時間1分32秒 ★19年全国大会

(5)倉敷(岡山)  2時間1分35秒 ★19年全国大会

(6)仙台育英(宮城)2時間1分44秒 ★20年全国大会

(7)仙台育英(宮城)2時間2分 7秒 ★03年全国大会

(7)洛南(京都)  2時間2分 7秒  20年全国大会

(9)倉敷(岡山)  2時間2分 8秒 ★20年全国大会

(10)倉敷(岡山)  2時間2分 9秒 ★18年全国大会

 (予選、地区大会を含む。★は留学生を含む記録)

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