全国高校駅伝

世羅、冷静大差守る 男女V呼ぶ区間新(その2止) 女子・5区42秒差、確信の逆転

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5区で後続を引き離す世羅のテレシア・ムッソーニ=藤井達也撮影
5区で後続を引き離す世羅のテレシア・ムッソーニ=藤井達也撮影

女子レース経過

 世羅がアンカー勝負を制した。1区で4位につけると、2区以降も粘って5区のムッソーニにトップと42秒差の8位でたすきをつないだ。ムッソーニは区間新記録の走りで先頭の神村学園を3キロ付近で逆転。そのまま突き放した。神村学園は5位でたすきを受けた5区のバイレが4人を抜いて一時トップに立ったが、リードを守れなかった。仙台育英は全区間で安定した走りを見せて3位。3区までトップを走った北九州市立が4位に入った。


5区42秒差、確信の逆転

 世羅のアンカー・ムッソーニがたすきを受けたのはトップの立命館宇治と42秒差の8位。優勝候補の神村学園も5区で留学生のバイレが走り、逆転は難しいと思われたが、ムッソーニは「自信を持っていた」。3キロ付近で先頭を走るバイレを抜き去るとそのままフィニッシュし、チームメートと喜びを分かち合った。

 県予選会では5区で区間1位になったが、左脚の痛みや貧血で満足のいく走りができなかった。都大路へ向けてウオーキングなど軽めの練習を中心にして疲れを取ると徐々に復調。前日に「9割まで戻ってきた」(中川久枝監督)という見立てをはるかに超えた走りで、5区の区間記録を27秒も更新する快走を見せた。

 ケニアから留学した当初は日本語を話せなかったが、この日はインタビューで「勝つとしか思わなかったけん」とチームメートから教わった広島弁も飛び出した。周りからの信頼は厚く、1区を走った主将の山際は「(トップの姿が)見える位置で渡したらラストで逆転してくれると思っていた」と話す。

 神村学園などの優勝候補には、3000メートルの自己ベストを合計したタイムで後れを取っていた。中川監督も前日に目標を「入賞」と語るなど控えめで「優勝したい気持ちはある一方で、リラックスしていた」と振り返る。

 1区の山際が4位に入ると、4区まで粘りの走りで順位をつなぎ、アンカーに望みを託した。終始落ち着いたたすきリレーで並み居るライバルを押しのけ「120点満点」(中川監督)の走りで栄冠をつかみ取った。【黒澤敬太郎】

神村学園、ケガで失速 調整ミス 大会新ならず

5区で一時先頭に立った神村学園のバイレ(手前左)。右は立命館宇治の村松灯=藤井達也撮影 拡大
5区で一時先頭に立った神村学園のバイレ(手前左)。右は立命館宇治の村松灯=藤井達也撮影

 神村学園のアンカー・バイレは2位でフィニッシュ後、競技場外で一人、座り込んで泣き続けた。有川哲蔵監督やチームメートが迎えに来ても涙は止まらなかった。

 トップと19秒差の5位でたすきを受けた。ライバルとみていた仙台育英の米沢も含めて次々と追い抜き、約1・5キロで先頭に。予想したレース展開だった。

 しかし、そこからペースが上がらない。3キロ過ぎには世羅にかわされて失速気味に。レース後、泣き崩れる姿を見た有川監督は「本当に優勝させたかったんだな」と痛感した。

 失速の原因はレース中に右太ももを痛めたことだ。3区の中須、4区の鳥居が区間賞を取ったが、1、2区は区間11位と12位。思ったような走りができない選手が多く、有川監督は「コンディショニングがうまくいかなかった」と悔やむ。

 県予選会は1時間6分4秒をマーク。留学生を含めたチームでの高校最高記録だ。都大路では1996年に埼玉栄が記録した1時間6分26秒の大会記録更新を目標に、厳しい練習に取り組んでいた。主将の中須は「後輩たちには『最強チームを作っていくぞ』という気持ちでやってほしい」。やり残した夢を託す。【鈴木英世】

仙台育英1年、力出し切る

2区で力走する仙台育英の杉森=藤井達也撮影 拡大
2区で力走する仙台育英の杉森=藤井達也撮影

 同郷で憧れの先輩が走った2区で仙台育英1年の杉森が力走した。後半、曲がり角が続くコースを迎えた。カーブに沿うのではなく、最短距離で走ることを意識した。「(米沢)奈々香さんに走り方を教わった」。一つ順位は下げたが3位でたすきをつなぎ「悔いはない」と力を出し切った。

 昨年は全日本中学校陸上の1500メートルで優勝した。仙台育英に進学したのはこの日アンカーを務め、同じ浜松・北浜中出身で1学年上の米沢の存在がある。「奈々香先輩の背中を追いかけたい」。昨年、テレビで優勝を見てその思いはさらに強まった。

 だが、11月中旬に練習中に左足を痛めるアクシデント。「大会に間に合わないんじゃないか」。不安がよぎる中、寮でも隣の部屋である米沢から声をかけられた。患部のマッサージを受け「大丈夫だよ。走れるよ」。

 12月には練習に復帰したが、初めての都大路はぶっつけ本番。緊張していたこの日の朝、米沢から左腕にメッセージを書き込んでもらった。「最高の結果にしよう。頑張ろうね‼ ななか」。万全な状態ではないが期待に応える走りを見せた。「この経験を生かし、来年は先輩たちと優勝を目指したい」。王座奪還を誓った。【面川美栄、安田光高】

1区独走、勇気の区間賞 酒井美玖(みく) 北九州市立・3年

1区で独走する北九州市立の酒井=藤井達也撮影 拡大
1区で独走する北九州市立の酒井=藤井達也撮影

 スタートが苦手だ。だが「人生最高のスタート」から区間賞を獲得し、チームを過去最高の4位に導いた。

 各校のエースが集う1区。スタジアム内でトップに立ち、悠然と一人旅を続けた。終盤の上り坂では険しい表情も見せたが、2区の柳井が見えると、「みんなで決めていた」というまぶしい笑顔でたすきをつないだ。19分18秒。「狙っていた」区間賞だった。

 陸上より野球のキャリアが長い。兄の影響で小学2年から野球を始め、中学も野球部で唯一の女子選手として白球を追った。主に1番打者で三塁手だったが「けん制が怖く、盗塁は苦手」。一方、長距離には自信があり、中学時代は毎年、陸上部の補強選手として駅伝大会に出場していた。そこでの喜びが忘れられず「駅伝で日本一になりたい」と北九州市立に進んだ。

 足りなかったのは自信だった。荻原知紀監督の「誰よりも力はあるんだから、トラックから飛び出ろ」との言葉が自らを奮い立たせた。「1人で走るのは怖くなかった」。卒業後は実業団に進む予定。「いずれはマラソンで五輪に出たい」。陸上人生はまだ中継点だ。【森野俊】


女子歴代10傑◇

 学校       記録        大会

(1)神村学園(鹿児島)1時間6分4秒  ★20年鹿児島

(2)埼玉栄(埼玉)  1時間6分26秒  96年全国大会

(3)神村学園(鹿児島)1時間6分32秒 ★19年鹿児島

(4)仙台育英(宮城) 1時間6分35秒 ★17年全国大会

(5)興譲館(岡山)  1時間6分50秒  10年中国

(6)興譲館(岡山)  1時間6分54秒  05年全国大会

(6)豊川(愛知)   1時間6分54秒  13年全国大会

(8)埼玉栄(埼玉)  1時間6分56秒  96年埼玉

(9)仙台育英(宮城) 1時間6分59秒 ★20年宮城

(10)埼玉栄(埼玉)  1時間7分0秒   97年全国大会

(10)仙台育英(宮城) 1時間7分0秒   19年全国大会

 (予選、地区大会を含む。★は留学生を含む記録)


◇女子の優勝回数上位11校◇

(1)豊川(愛知)     4回

 仙台育英(宮城)   4回

(3)埼玉栄(埼玉)    3回

 立命館宇治(京都)  3回

 筑紫女学園(福岡)  3回

(6)市船橋(千葉)    2回

 大阪薫英女学院(大阪)2回

 須磨学園(兵庫)   2回

 興譲館(岡山)    2回

 諫早(長崎)     2回

 世羅(広島)     2回


女子区間賞と日本選手1位

1区(6キロ)

 酒井美玖(北九州市立)    19分18秒

2区(4.0975キロ)

 ワングイ・エスター(興譲館) 12分23秒

(2)細谷愛子(立命館宇治)    12分50秒

3区(3キロ)

 中須瑠菜(神村学園)      9分37秒

4区(3キロ)

 鳥居華(神村学園)       9分15秒

5区(5キロ)

 テレシア・ムッソーニ(世羅)☆14分37秒

(3)米沢奈々香(仙台育英)    15分37秒

 ※丸囲み数字は順位、☆は区間新記録

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