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建設石綿で国敗訴確定 放置してきた責任は重い

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、病気になった元作業員らが起こした裁判で、国の賠償責任が初めて確定した。

 327人に約23億円を支払うよう命じた東京高裁判決について、最高裁が国の上告を退けた。

 同種の裁判は2008年以降、全国で起こされている。原告側の元作業員は全体で900人を超えるが、提訴までに約400人が死亡し、裁判中に230人余が亡くなっている。国は、この事態を重く受け止めなければならない。

 東京高裁判決は、国が遅くとも1975年の時点で、防じんマスクの着用や、警告表示を義務づけるべきだったにもかかわらず、規制を怠ったと認定している。

 個人事業主の「一人親方」への賠償も命じている。下請けや孫請けも多く、安全管理が徹底されにくい現場の実情を考慮した。

 国は1、2審で敗訴を重ねながらも、争い続けてきた。これに対し最高裁は、国に責任があると認め、被害者を幅広く救済する考え方を示したと言える。

 石綿は安価で耐火性に優れ、高度経済成長期から建材として広く使われた。当時から、粉じんを吸い込むと中皮腫や肺がんなどになる危険性が指摘されていた。

 しかし、国が使用を原則禁止したのは06年になってのことで、欧米から大きく遅れた。健康対策より、経済的メリットを優先したと言われても仕方がない。

 石綿は「静かな時限爆弾」と呼ばれ、吸い込んでから数十年後に発症するケースもある。毎年1000人前後が健康被害を認められており、半数が建設関係者だ。

 建設現場の被害者は今後も増えて、2万人にも上ると予想されている。裁判を起こした人は、一部に過ぎない。

 原告側は、大気汚染公害を参考に、国と建材メーカーが資金を出し合って基金を設け、被害者に補償する制度を提案している。

 メーカーについては、1、2審で責任を認める判決が出ており、最高裁で近く最終的な判断が示される。救済方法の議論に参加する必要がある。

 被害救済は待ったなしだ。国は残る裁判の結果を待たず、直ちに救済の仕組みづくりに乗り出さなければならない。

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