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「手芸」を通して見える現代社会 ブームの背景に「反発」 専門家17人の手芸論

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上羽陽子・山崎明子編「現代手芸考」(フィルムアート社)
上羽陽子・山崎明子編「現代手芸考」(フィルムアート社)

 「趣味」「女性的」「癒やし」――。さまざまなイメージが絡み合う「手芸」の森に分け入り、ものづくりの意味を解きほぐす「現代手芸考」(フィルムアート社)が刊行された。文化人類学やジェンダー研究、美術・工芸史など多領域の専門家17人による初の本格的手芸論。編者の一人、国立民族学博物館の上羽陽子准教授(染織研究)は「社会における手芸の位置づけを探ると、私たちがどんな社会を生きているのかが見えてくる」とその意義を語る。

 上羽さんによると、「いま日本は手芸が熱い」。コロナ禍以前、数万人を動員する大規模手芸イベントが年に何度も開かれ、自宅でつくった手芸品を簡単に販売できるインターネットサイトはここ10年で充実。「手芸はもともと『家庭的』や『女らしさ』といった価値観と結びつけられてきましたが、既存の概念を超えた広がりをみせています」。いまや「ハンドメイド」とその名を衣替えし、男女問わず、自己表現のための「作品」や気軽に稼げる「商品」として存在感を増しているというのだ。

 そもそも「手芸」という言葉は明治期の女子教育で、家庭生活全般の手仕事を表す科目名として登場した。元来、女性性と強く結びつけられた言葉であり、「美術」「工芸」という芸術のジャンルから排除されただけでなく、「作り手のジェンダーによっても二重に周辺化されてきた」と指摘。そうした背景から研究領域としてもほとんど未開拓の分野だったという。2014年から3年半にわたる共同研究の成果として編まれた本書は、「つくる」「稼ぐ」「飾る」など六つのキーワードを章題とし、「手芸的なるもの」の輪郭を描く。

「ブーム」の背景にあるのは「社会に対する反発」

 「手芸を通して見える社会」とは…

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