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東京へ ともに歩む

毎日新聞

世界パラトライアスロン横浜大会に出場し、バイクで力走する中沢隆(左)=横浜市中区で2019年5月18日、佐々木順一撮影

東京・わたし

「盲導犬、大丈夫?」のない社会に パラトライアスロン・中沢隆

 街を歩けば「かわいそう」と同情的な声を掛けられ、公共施設を利用しようとすれば受け入れを拒まれる。盲導犬に対する日本社会の理解は依然乏しい。盲導犬ユーザーでありパラトライアスロン視覚障害クラスで東京パラリンピック出場を目指す中沢隆(41)=サイネオス・ヘルス・コマーシャル=に実体験を踏まえた現状や、大会後に望む社会のあり方について聞いた。【聞き手・村上正】

 ――盲導犬ユーザーとなったきっかけは?

 ◆白杖(はくじょう)を使って外出していましたが、電車のホームから転落しそうになったり、通行人とぶつかったりすることが多々ありました。トライアスロンを始め、電車を利用する機会も増えたので、安全、安心に生活を送りたいと思い、2014年に盲導犬を持つことを決めました。

 ――盲導犬はどのような存在?

 ◆盲導犬のデネブは、オスで8歳のラブラドルレトリバーです。最初の頃は排せつのタイミングが合わないこともありましたが、生活に慣れてくると一緒にいるのが当たり前になり、今では子どものような存在です。プールやトレーニングジムなどに連れて行ってくれ、競技生活で欠かせません。

 ――最近は日本盲導犬協会による「世間の誤解にほえる」というテレビCMが話題です。CM同様に「誤解」を感じた場面はありますか。

 ◆電車に乗っていると「大変ねー」など、デネブに声を掛ける人がいます。気持ちに余裕がある時は、「互いに助け合いながら喜んで生活していますよ」と返すようにしています。

 ――なぜ、「誤解」は生まれると考えますか。

 ◆まず国内で活動する盲導犬は900頭余りです。数が少なく、一般の人たちが目にする機会も圧倒的に少ないのが一因だと考えます。盲導犬の育成団体が広報活動に力を入れてくれていますが、盲導犬に接する機会を増やさないと理解してもらうのは難しいのかなと思っています。

盲導犬のデネブと一緒に練習に通うパラトライアスロン選手の中沢隆。練習中、デネブは建物の外で静かに待っている=西東京市で2019年6月28日、丸山博撮影

 ――長年の課題として言われている公共施設や飲食店での受け入れ拒否に遭った経験はありますか。

 ◆競技活動で各地を回るため、2~3カ月に1度は経験しています。個人経営の飲食店で断られることが多かったのですが、最近は過去に入店できた大手の飲食チェーン店でも「犬はダメ」と言われることがあります。外国人スタッフも増え、店側が(補助犬を伴う使用者の受け入れを義務付ける)身体障害者補助犬法についてスタッフに説明していないのかもしれません。いずれにせよ、まだまだ知られていないと日々、実感しています。

 ――受け入れ拒否に遭った場合はどのように対応していますか。

 ◆補助犬法で認められていると説明しますが、昼のランチの忙しい時には話を聞いてくれません。その時は別のお店を探します。

 ――講演活動にも取り組まれていますね。

 ◆依頼があれば、どこにでも行きます。3年ほど前から始め、小中学校をはじめ鉄道会社の研修会などにも呼んでもらい、これまでで約30回こなしました。目が見えなくなってから競技に出合い「ピンチの時にでもチャンスはあります」と伝えています。楽しんでもらえるようクイズ形式にしながら盲導犬を取り巻く環境についても紹介しています。

 ――東京オリンピック・パラリンピック開催をきっかけに求めたい社会の変化は?

 ◆施設や飲食店を利用する際、「盲導犬、大丈夫ですか?」と確認をするようにしていますが、法律でも定められており、本来は必要ないはずです。視覚障害者が必要以上に気を使わなくて済む社会になれば――と願っています。

なかざわ・りゅう

 1979年生まれ、東京都出身。27歳で緑内障と診断され、31歳の時に視野の95%が欠損。テレビ番組で全盲の少女がトライアスロンに挑戦する姿に感銘を受け競技を始める。2016年世界パラトライアスロンイベント優勝。

村上正

毎日新聞東京本社運動部。1984年、神戸市生まれ。2007年入社。舞鶴支局、神戸支局を経て、大阪本社社会部では大阪府警を担当。17年4月から現職。競技は水泳やサーフィンを担当。東京パラリンピックでは取材班キャップ。16年リオデジャネイロ五輪を取材した感動から、長女に「リオ」と命名した。