メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

社説

「袴田事件」の最高裁決定 再審開始の判断を早急に

[PR]

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で、死刑が確定した袴田巌元被告について、再審開始を認めなかった東京高裁決定が取り消された。

 最高裁が「審理を尽くしていない」と差し戻す決定をした。改めて高裁で審理される。再審の可能性に道を開く判断だ。

 焦点になっているのは、犯人のものとされた衣類の血痕だ。衣類は事件の1年2カ月後、現場近くのみそタンクから発見された。

 静岡地裁は、袴田さんとも被害者とも一致しないとのDNA型鑑定を根拠に再審開始を決定した。高裁は鑑定の信用性を否定し、この点は最高裁も追認した。

 最高裁が着目したのは血痕の色だ。弁護団の再現実験では、みその醸造中に時間の経過とともに黒ずんでいくにもかかわらず、捜査記録では赤みがあった。これについて高裁に再検討を求めた。

 衣類は有罪の最大の証拠となっている。しかし、最高裁は証拠としての信用性に、疑問を感じているのだろう。

 裁判官5人のうち2人は、DNA型鑑定も信用に足るとして、直ちに再審を開始すべきだとの立場を表明した。

 そもそも裁判では、提出された自白調書45通のうち、44通が採用されていない。自白偏重の強引な捜査がうかがわれる事件だ。

 袴田さんは84歳になった。48年ぶりに釈放された後も、再審開始決定が取り消され、不安定な状況に置かれている。

 「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則からも、早期に再審を始めるべきだ。

 一連の経緯からは、時間がかかり過ぎる再審制度の問題点も浮かび上がる。退けられた第1次再審請求は決着までに27年を要した。

 今の第2次請求は判断が2度覆った。名張毒ぶどう酒事件の再審請求も似たような経過をたどり、元死刑囚は獄中で死亡した。

 第2次請求になってから、衣類発見時の写真など約600点の証拠が開示されたが、裁判所の勧告によるものだった。検察側に証拠開示を義務づける制度が必要だ。

 再審が「開かずの扉」と言われて久しい。その中で、開始決定が出される意味は重い。すぐに再審を始める仕組みも検討すべきだ。

コメント

投稿について

読者の皆さんと議論を深める記事です。たくさんの自由で率直なご意見をお待ちしています。

※ 投稿は利用規約に同意したものとみなします。

利用規約

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 鼻出しマスクで失格の40代受験生、トイレにこもり警察出動 注意されせき込む仕草も

  2. 際立つ大阪のコロナ死 その理由、高齢者の「命のリスク」高める構図とは

  3. 「菅語」を考える 緊急事態なのに「あいさつ」 響かない首相会見 青木理さんが考えたメディアの責任

  4. 英変異株、初の市中感染か 英国滞在歴ない静岡県の男女3人

  5. 全国で新たに4927人感染確認 月曜最多 重症者973人、15日連続最多更新

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです