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国の天然記念物、コクガンの日本と北極海を結ぶ往復9000キロの渡りの経路が、宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団と南三陸ネイチャーセンター友の会(南三陸町)の共同研究で判明した。同財団の嶋田哲郎研究室長は「大発見です。さらにデータを集めて、繁殖地や渡りの中継地を確認したい」と話す。
海鳥のコクガンは北半球に広く分布し50万羽以上いるとされる。アマモなどの海草を食べ、3歳から繁殖し、一度つがうと相手を代えずに十数年生きる。日本に飛来して越冬するのは2500~3000羽ほどだが、繁殖地や渡りの中継地は分かっていない。
嶋田研究室長らは、2020年1月に南三陸町の志津川湾で越冬していたコクガン4羽にGPS(全地球測位システム)発信機を付けて離したところ、うち1羽がロシア北部のファデエフスキイ島で夏を過ごし、11月に日本に戻ってきた。
この1羽は19年夏に生まれた雄。捕獲時の体重は1470グラムで、30グラムの発信機を付けて20年5月1日に南三陸を飛び立った。識別用の数字「43」と書いた足輪を付けたことから、「43番」と呼ばれている。
「43番」は海上で休んだり、標高3000メートル級の山を越えたりしながら時速50キロ以上で北上を続け、7月12日にファデエフスキイ島に到着した。ほぼ直線のコースで約4200キロを飛んだ。この島で夏を過ごし、9月17日に同島を飛び立つと、海岸沿いのコースを約5000キロ南下し、11月23日に北海道・襟裳岬に到着した。12月21日時点で襟裳岬にとどまっている。
嶋田研究室長は「43番」が繁殖期を迎えていないことから、「ファデエフスキイ島は繁殖地ではなく換羽地」と指摘する。コクガンは毎年夏に羽が生え変わって飛べなくなるため、雪が解けて餌となる草が生える同島で換羽したとみる。
さらに日本に戻る秋の渡りのコースが春と違うのは、「北極海の夏は短いため春は最短のコースを選び、秋は餌が豊富な海沿いをゆっくり南下するのではないか」(嶋田研究室長)という。
調査は21年1月にも志津川湾で実施する予定で、嶋田研究室長らは新たにGPS発信機5台を準備している。繁殖地や渡りの中継地が判明すれば、コクガンの保全につながる。「43番」に付けた発信機の電池は2、3年もつといい、「43番」の次の渡りのデータも期待できる。【石丸整】
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