「女・男の気持ち」(2020年12月17~23日、東京・大阪・西部3本社版計20本)から選んだ「今週の気持ち」は、東京本社版12月17日掲載の投稿です。
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<今週の気持ち>
60年後も幸せ 東京都練馬区・関朋子さん(主婦・80歳)
「『新宿の母』に占ってもらいたいので一緒に行って」と、友に声をかけられたのは21歳の冬のことだった。彼女が年下の彼との恋に悩んでいたころのことである。
当時、人気の占師であった新宿の母には、常に大行列ができていた。怖がる彼女のため、私は軽い気持ちで先にみてもらった。「来年の中ごろ、結婚する相手に出会う」と言われ、気をよくした私は「大丈夫よ」と言いながら彼女の背中を押した。だが、彼女は「このまま進めたら7年後にはどちらかが死ぬ」と言われてしまった。そのとき、私は彼女に何と声をかけたか、覚えていない。
翌年5月、私は占ってもらった通りに出会いがあり、結婚した。1年後、彼女は彼のふるさと・栃木県へ嫁いでいった。「細くて頼りない」と家族から反対されていた彼は、堂々としたすし屋のおやじさんになり、彼女は働き者のおかみさんになった。
10年ほど前から年に2度、私は彼女を訪ねる。その日は宇都宮の駅前に車が待っていて、助手席に座った途端、私たちは妻でも母でも祖母でもなくなる。思いきりしゃべって、食べて、笑って、駅まで送ってもらう。「こうやっていい時間を過ごせて私たち幸せだね」「元気でいようね」と言い合い、「いつも同じせりふ……」と笑う。
今年はコロナの影響で会えなかったが、私たちは80歳になった。
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<担当記者より>
新宿の母、一世を風靡(ふうび)した存在でしたね。ご存じない方のために簡単に説明しますと、東京・新宿で延べ300万人以上の相談に乗り、元祖「行列のできる占師」などと呼ばれた女性です。昨年お亡くなりになりました。
高校時代の友人と一緒に、軽い気持ちで行列に並んだ関さんは「ああいう占いは、悪いことは言わないと思い込んでいたんです」。友人が言われた「このまま彼との関係を続けたら7年後にどちらかが死ぬ」という言葉に、一緒にショックを受けました。
関さん自身は占い通りに翌年、出会いがあり結婚。「会ったとき、この人なんだなとわかりました」と、ご主人との出会いを振り返ります。一方、友人は彼とそのまま結婚。おすし屋さんを切り盛りし、60年近くたった今もご夫婦で暮らしているそうです。占いは外れました。
「当たるも八卦(はっけ)当たらぬも八卦」とはよく言ったものです。占いを思い出話にしながら、80歳になった今も続く友情、すてきだと思いました。みなさんからのコメントもお待ちしています。コメントはこちらからどうぞ。
=次回は2021年1月7日に掲載します