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横浜FCは、コロナにどう立ち向かったのか? 松本雄一×みる兄さん[前編]

情報提供:アズリーナ

Jクラブ関係者が情報発信することには、様々なメリットがある。とりわけ、「他業界のエキスパートと知り合える」ことは、数字には変えられない価値といえるだろう。

J1横浜FCでマーケティング部に所属する松本雄一氏と、一部上場企業にてブランドマネージャーを務める「みる兄さん」の関係もその一つだ。

松本氏のnoteがきっかけで交流した両名は、今や2週間に1回ぐらいのペースで会い、様々な知見を交換する間柄なのだという。

コロナ禍で、スポーツ界全体が半ば強制的にデジタル対応を強いられている。外部エキスパートとの繋がりは、大きな助けになるはずだ。今回は、ともにマーケティングのプロである両名に「コロナ禍におけるJクラブのマーケティング」について話を伺った。

(取材日:2020年11月18日 聞き手:澤山モッツァレラ)

営業しに行ったら、横浜FCにスカウトされた

―松本さんはサイバー・バズさんからの中途入社組で、スポーツヒューマンキャピタル(SHC)時代からのご縁で横浜FCさんに入社されたんですね。

松本 そうです。サイバー・バズで営業の責任者を5年ほど担当してから入社しました。SHCに通っていた2018年の5月、たまたまワークショップで同席したのが横浜FCの社長で。その後、営業でSNSマーケティングを提案しに行ったときに声をかけていただきました。

 

―営業しに行ったら、スカウトされたと(笑)。

松本 そうなんです、アポを終えて帰り際に「実は今日の本題はその話じゃなくて、ウチで働いてくれないか」と。そのときはタイミングが合わなかったんですが、1年後ぐらいにもう一度お声がけいただいて。

「この機会を逃したら、もうチャンスはないだろうな」と思って、前職と調整したうえで昨年5月に入社を決めました。当時はJ2でしたが、入社後に勝ち進んでJ1に昇格できました。タイミング的にも良い時期に加入できて、ありがたかったですね。

 

―一方、みる兄さんは上場企業のブランドマネージャーとして辣腕をふるい、Twitterでたびたび大きなバズを起こす一方、横浜FCのサポーターとしても発信しておられます。

みる兄さん もともと横浜生まれ横浜育ちで、横浜フリューゲルスが横浜FCになった経緯も含めてずっと見てはいました。サッカーファン歴は、長い方だと思います。Jリーグ創世記から、大学の卒業旅行でセリエAやプレミアリーグを観戦したり。ただ、当時は特定のチームが好きというわけではなかったですね。

 

―横浜FCを好きになったきっかけは、どういうものでしたか?

みる兄さん 2018年夏、当時はTwitterを始めた直後だったんですが、たまたまニッパツ三ツ沢球技場で横浜F・マリノスと横浜FCの試合があると知って。「そんな試合あるんだ」とつぶやいたらじげんさん に、「三ツ沢はいいよ、Jリーグ見るには最高の環境だよ」とリプライをもらったんです。

それから三ツ沢への行き方を調べて、一人で行ったら衝撃だったんですね。プロの試合を、あの近い距離感で見られるのが。選手の声や音がバチバチに聞こえて、迫力があった。その1カ月後ぐらいから息子を連れてバックスタンドに行って、通い続けています。

 

―こういうハマり方、レアかもしれないですね。

松本 そうですね、ソーシャルメディアきっかけというのは珍しいと思います。一番多いのは、小学校で配られたチラシをお子さんが持って帰って「見に行こうよ」というケースですね。お子さんも喜ぶし、親御さんも三ツ沢の距離の近さにハマるという。

みる兄さん 僕のところにも小学校から割引チケットが来て、それを息子が持ってきてくれましたね。

松本 小学校の連絡帳は、すさまじい媒体だと聞いたことがあります。必ず親御さんが見るものなので、チラシを入れると効果が高いんです。

みる兄さん そうですね、息子の連絡帳にチラシが入っていたことは、やっぱりすごく印象に残っています。

―このあたり、後ほど伺うホームタウンの話にも繋がってきそうですね。

あくまで新参として、穏やかに活動してます(笑)。

―お二人はどういう経緯で面識を持ったんですか?

みる兄さん 松本さんの転職noteがきっかけですね。僕自身も、「スポーツ業界で仕事をしたら自分はどう変わるんだろう」と漠然と思っていて。

好きなことをビジネスにするのと、ファンとしてサポートするのとは全然違いますよね。その現場に飛び込んだっていう事実が単純にすごいと思って、松本さんにリプライしたんですね。そうしたら、丁寧にリアクションをいただいて。

それで、「Twitterでマーケ好きの人を連れて観戦ツアーでもしましょう」って話をしつつ、その後に息子と一緒に試合に行ったときにお会いしたんですね。

松本 すごく嬉しかったのを覚えてます。しばらくTwitterをやっていなかったので、noteも書いたし発信してみようってやった矢先で。

みる兄さんのアカウントも初めて知ったぐらいなんですが、「こう発信したらこう反応してくれるんだ」とわかったきっかけになった気がします。自信を持って発信していいんだ、と。

 

―松本さんの発信には、温かいリアクションが多いですね。

松本 うまくいかないこともありましたけど(苦笑)。サポーターの皆さんも後押ししてくれて、いいコミュニケーションができていると思います。

みる兄さん 僕自身は古参ファンがたくさんいることをわきまえ、あくまで新参という立場で穏やかなファン活動をすることを徹底しています。好きなクラブの中の人と関われることで、調子に乗らないよう自制してます(笑)。

松本 とはいえ、ゴール裏ど真ん中でガッツリ応援に徹するという方よりも、意外とライトな、バックスタンドに来てくれる層が写真を撮ったりリツイートしたり日常的に発信してくれる傾向があります。これは男女問わず。新規のファンづくりに寄与してくれているのは、コアな方たちに加えてこの層も中心になっていると思います。

 

―ゴール裏の友人がたくさんいますが、彼らは試合日とても忙しいんですよね。試合前は場所取りや横断幕などの設置、試合中は飛び跳ねて声を出し、試合後は片付けて撤収、アウェーならロングドライブもある。物理的に、スマホに触れる時間が少ない。

松本 そうですね。ゴール裏の皆さんはスタジアムにおけるコンテンツを作り、それを周囲にいる人達がさらに広めるという構図になってるのかなと思います。

ノンフットボールの部分をどう展開するか

―本題に入ります。コロナ禍の2020年、横浜FCさんはどのような取り組みをされていましたか?

松本 いろいろ考えた結果、「ノンフットボールの部分をどう展開するか」でしたね。新しいプロダクトを作る、デジタル投げ銭、クラウドファンディングなども視野に入れて。デジタルの取り組みは、「とにかくまず始める」というところから入りました。

 

―何が当たるかわからないし、とにかく打ち手を増やすと。

松本 そうですね、本当に何がどうなるか見えなかったので。DX(デジタルトランスフォーメーション)とか皆言ってますしとにかく新しいことは手を付けました。早めに取り組んで、どうだったかは後で判断しようと。

 

―「特にこれがうまくいった」というものはありますか?

松本 残念ながら、特別うまくいった!というものはないです。僕の結論は、やはり「現地のコンテンツに優るものはない」でした。

ただ、サポーターの皆さんから一定の反響を得られたものはありました。例えば4月1日、エイプリルフール企画として「嘘ではなく夢を語ろう」というテーマでこのようなnoteを書きました。

また、「横浜FCオリジナルビール開発プロジェクト」も喜んでいただけたのかなと思います。

正直「成果が出た」というものはないのですが、未来を語ることや明るい姿勢を見せることには取り組んでいました。ファンエンゲージメントを維持する意味で、こうした姿勢はとても大事だと思いましたね。


―思い起こせば、緊急事態宣言の前後ぐらいから強烈な自粛圧力が存在した気がしています。皆暗かったですよね、やはり。その中で、Jクラブが少しでも明るい姿勢を持つのは大事だと思います。

松本 ありがとうございます。あとは、フリ丸が横浜中華街にお邪魔して動画を撮って、中華街のお店で食事をするということもやりましたね。これは3月末、緊急事態宣言に入る直前のことですが。

僕らが存在する意義を考えたときに、外出自粛で街から人が消えるというニュースを見て、今地域の役に立つというのは例えばこういうことじゃないかと思ったんです。中華街はそれまで全く接点がなかったんですが、それでもいくつかのお店に直接連絡して行ってみました。

ただ、お伝えしたとおり新しいデジタル施策はこちらの力不足もあり、サポーターが置いてけぼりになる部分がどうしてもありました。これではスケールしないなと。

みる兄さん 難しいですよね。そもそもお客さんがリアルで投資するビジネスに、どうデジタルで親和性をもたせるか。

ブランドマーケティングとして見ると、例えばネット上のコンテンツを買うときはわかりやすいんですよね。その場で決済して、その場でサービスを享受できる。例えばスマホで読める漫画などのコンテンツに課金するケースです。

デジタルへの投資は無駄にはならないと思いますが、リアルが細っていく中でデジタルを太らせるのは本当に難しいなと。

松本 反省点は多いですね。クラウドファンディングやギフティング、オークションも始まって、どうしても売上に走ってしまったというか。経営危機になりかねない状況であるとはいえ。

一周回って、やるべきは地道でアナログな部分、ホームタウンに対して直接的にアプローチできる活動をし、それを間接的にデジタルで広めるといったことだったのかもなと思います。

横浜FCさんは、健全な形で事業を進めていると思います

えとみほさんの回ではDXやSNS活用についてお話を伺いましたが、あくまでそれは「リアルで、ローカルでJクラブが支持されている」前提にある施策でした。

みる兄さん 僕自身も、デジタル施策はすごく好きなんですけど。ローカルでリアルな部分をやったうえで、その体験がTwitter上で広がっていくという流れだと思います。デジタルで閉じているものをデジタル上で展開し、リアルな場でお金に変えるというのは相当に難しいですね。

そういう意味でいうと、横浜FCさんは充電式カイロであったりとプロダクトの開発を強化していると感じます。クラウドファンディングでなく受注生産型で、商品をちゃんと開発して、お客さんから売上を立てて、それがクラブの収益になる。そういうモデルを追求し続けていると思いました。

結局、ソーシャル上でも跳ねるのはそういうものですし、一番健全な形で事業を進めているのかなと拝見していて思いました。

松本 ありがとうございます。まさに仰るようなところで、コロナ禍になった4月の段階で、事業部全体で収益の「第四の柱」を一生懸命考えたんですね。4~5時間かけてウンウン頭をひねる中で、いろいろな意見が出ました。

「サポーターの方もクラブのためにといってお金を使おうとしてくれましたが、そこに頼るのは最終手段です。業績にも左右されるスポンサー獲得はアッパーに近く、ホームタウン活動も難しい中でどこに入り込むかといえば人々の日常。衣食住をマーケットとして考え、その中に入っていくにはどうしたらいいか?」

といったような。たとえば、企業コラボで日用品のブランドを展開してみたらどうかとか、農業で食を提供できないかとか、様々な意見交換をしました。

みる兄さん ファンの立場でいうと、シーズンシートを買うまで僕は「チケットを買ったりプロダクトを買うことが、クラブの強化費につながる」ということをそれほど意識したことがなかったんですね。

収益が改善すれば、クラブが強くなる可能性が高まる。無理をするわけでなく、日用品や充電器など普段遣いするものをクラブに寄せていくだけで強化につながる。「この購買は、クラブへの投資になるんじゃないか」と思ったときに、物を買うことに対しての感覚が「応援」に変わったんです。

スポーツチームとファン・サポーターの関係のあり方として、もちろん試合を見に行くのも応援の一つ。でもそれ以外にも、プロダクトを購入したり普段遣いのものを取り入れるだけでクラブの強化につながるんだ、ということを伝えていくのは大事かなと思いますね。

 

―規模が違う話ですが、バイエルン・ミュンヘンの本拠地アリアンツ・アレーナに行ったときはグッズ売り場に溢れんばかりのグッズがあったんですね。歯磨き粉、タオル、洗顔フォーム、おむつからトイレットペーパーまで。小さな頃から、バイエルンが生活の一部になっている子がたくさんいる。

みる兄さん そうなんですよね。僕は小さい頃野球少年だったので、ベイスターズが全くお客さんが入らない頃から見てきました。グッズ売り場をいかに拡充しながら環境を整えるかは、すごく大事。中に人が入れるような、ショールーミングするようなグッズ売り場を作ることで明らかに購買意欲は変わってくるので。

松本 そうですね、ウチはそこをクリアするにはまず指定管理者になるしかないんですよね。現状、いまのグッズ売り場以外での展開は難しいんです。

みる兄さん そこはそうですよね、ベイスターズさんはそこがすごくうまかったなと思います。

松本 めちゃくちゃ、大きな課題の一つですね。

 

<続く>


情報提供:アズリーナ

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