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大岡信と戦後日本

86歳で死去した詩人、大岡信氏の多面的な仕事を通し、戦後日本の文化・芸術のありようを検証します。

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大岡信と戦後日本

/31止 「世紀の変り目」にて 他者へ開く「架橋」のうたげ

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大岡信=静岡県裾野市の自宅で2009年7月14日
大岡信=静岡県裾野市の自宅で2009年7月14日

 大岡信と記者の接点はごくわずかなものだが、忘れがたいのは1998年、本紙文化面で月1回、現代詩の新作を掲載することにした際、初回を大岡に依頼したことである。快諾を得て、書いてもらった作品が「こほろぎ降る中で」だった。5行6連30行のうち、第5連のみを引く。

 <田村さん 隆一さん あんたが/好き嫌ひともはつきり語つた二十世紀も了(おわ)る/こほろぎがばかに多い都会の荒地を/寝巻の上へインバネス羽織つただけのすつてんてん/あんたはゆつくり 哄笑(こうしょう)しながら歩み去る>(本紙98年11月4日東京本社版夕刊)

 同年8月に死去した荒地派の詩人、田村隆一(23~98年)への追悼詩だ。インバネスはコートの一種。これは翌99年刊行の自選詩集『捧(ささ)げるうた 50篇(ぺん)』に収められた(のち詩集『世紀の変り目にしやがみこんで』2001年にも収録)。

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