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大岡信と記者の接点はごくわずかなものだが、忘れがたいのは1998年、本紙文化面で月1回、現代詩の新作を掲載することにした際、初回を大岡に依頼したことである。快諾を得て、書いてもらった作品が「こほろぎ降る中で」だった。5行6連30行のうち、第5連のみを引く。
<田村さん 隆一さん あんたが/好き嫌ひともはつきり語つた二十世紀も了(おわ)る/こほろぎがばかに多い都会の荒地を/寝巻の上へインバネス羽織つただけのすつてんてん/あんたはゆつくり 哄笑(こうしょう)しながら歩み去る>(本紙98年11月4日東京本社版夕刊)
同年8月に死去した荒地派の詩人、田村隆一(23~98年)への追悼詩だ。インバネスはコートの一種。これは翌99年刊行の自選詩集『捧(ささ)げるうた 50篇(ぺん)』に収められた(のち詩集『世紀の変り目にしやがみこんで』2001年にも収録)。
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