(上)あの日、僕がランドセルを置いた理由 「伊達直人」1号の告白
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恵まれない子どものために――。「伊達直人」を名乗り、ランドセルなどを寄付する「タイガーマスク運動」。全国各地で広がるようになったのは今から10年前のことだ。そのきっかけを作った男性が、毎日新聞の取材に、当時の思い、そして、その後に素性を明かした理由などを語った。【鈴木敦子】
児相所長「贈り主のセンスに驚いた」
それは2010年12月25日の土曜日の正午ごろのことだった。前橋市の群馬県中央児童相談所(中央児相)の当直職員が、玄関前に、新しいランドセル10個が置かれていることに気付いた。添えられた手紙には「子どもたちのために使ってください」と書かれていた。
児相は家庭で暮らせない子どもたちを保護したり、子育て中の親子を支援したりする機関だ。連絡を受けた所長(当時)の深代栄一さん(69)は、急いで職場に向かった。
「贈り主は?」。深代さんは到着してすぐに職員に尋ねた。「伊達直人さんです」。その報告にピンときた。
伊達直人とは、1968~71年に少年誌で連載された梶原一騎さん原作のプロレス漫画「タイガーマスク」の主人公。素性を明かさずにファイトマネーを孤児院に寄付していたというストーリーだった。「全国の人がその名を聞けば、ストーリーを思い浮かべられる。贈り主のセンスに驚きました」
深代さんは県庁の広報部門に勤めた経験がある。これは注目を集めるだろうと思った。報道機関に発表すると、案の定、取材が殺到した。地元の新聞やテレビだけでなく、在京のワイドショーや週刊誌も大きく取り上げた。
全国各地に伊達直人が続々と現れるようになった。クリスマスから数日…
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