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「成人式すれば会食を助長する…」埼玉県内で簡素化の動き 判断分かれる自治体

晴れ着姿で集合写真を撮る新成人=さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで2020年1月13日午後、山越峰一郎撮影

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 新型コロナウイルス感染が拡大する中、埼玉県内でも成人式を式典のみとするなど簡素化する動きが広がっている。飯能市は式典そのものの中止を決定。入間市は同窓会幹事に同窓会の開催見合わせを呼びかけた。感染状況が見通せない中、各自治体は難しい対応を迫られている。【鷲頭彰子】

 県教育委員会のまとめによると、11月1日現在の新成人予定者は前年より831人少ない7万3283人。63市町村のうち、感染予防策として内容を簡素化する自治体は54市町に上った。式典のみを実施する自治体は36市町村で、戸田、越谷、加須の3市は式典を行わず記念行事のみとする。

 飯能市は1月10日に予定していた式典の中止を23日に決めた。式典には毎年500人前後が出席している。生涯学習課の担当者は「式典参加人数だけの問題ではない。人が集まり、その後の会食などを助長してしまう。断腸の思いで中止を決定した」と説明した。

 県は成人式後の会食についても自粛を要請している。入間市は市内全11中学校の当時の担任に式典後の同窓会予定を調査。半分以上で予定されており、市は幹事に自粛を呼びかけるとともに、新成人に「感染症拡大防止のための大切なお知らせ」を送付。式典後の交流の自粛を呼びかけた。

 新成人が約1万4000人に上るさいたま市は、2部制にして5000人ずつに分け、間隔を空けて座るよう椅子に張り紙をする計画だ。家族は新成人1人につき1人の出席とし、式典後の5人以上の会食は控えるよう呼びかける。

医療現場からの訴え「命がけで戦っている人々へ配慮ができる大人に」

 千葉県船橋市では、市医師会副会長の鳥海正明教育委員(56)が「船橋の新成人には、困っている人々、命がけで戦っている人々、笑うことの許されない人々への配慮ができる大人になってほしいと、心から願います」として、慎重な判断を求めるメールを12月初旬に市教委関係者に送信。その後、市は会場開催中止を発表した。鳥海委員に中止を訴えた思いを聞いた。

 ――なぜ開催中止を訴えたのか。

 ◆開催案内をもらった時、必死で戦う現場のことを考えると「はい、分かりました」とは返事できませんでした。ある会合の後、新型コロナの患者を診る病院の幹部を車で病院へ送ったことがありました。その人は家にも帰れず「死にそうな気がする。家族の顔が浮かんじゃうんです」と涙目で話しました。

 現場は疲れ切っています。ただ、幹部が現場で弱みを見せると、部下たちが気持ちで戦えなくなります。弱みを見せずにきたのでしょう。こうした人への配慮ができるのが成人ではないでしょうか。

 ――行政に期待することは。

 ◆ちょうど職場でリーダー的立場にある50歳前後の親御さんを持つ新成人を集めるのはハイリスクです。憂慮すべき事態を想定し、配慮するのが行政の役割ではないでしょうか。船橋市の決断は、医療現場にとって大きな助けになると思います。

「成人式中止」訴えた船橋市教育委員のメール要旨

 医師で船橋市教育委員の鳥海正明さんが、市教委関係者に送ったメールの要旨は次の通り(本人の許可を得て転載)

   ◇   ◇

船橋市教育委員会 社会教育課 御中

 いつも大変お世話になっております。

 船橋市としては、成人式を予定通り開催するということですが、個人的には、中止が良いと考えます。

 成人は祝ってあげたいし、ご準備頂いた新成人、スタッフのご苦労も多大なものと思います。しかし、それらを足してもまだ足りないくらいの憂慮すべき状況にあることをお考えいただきたいと思います。

 祝い方は、他にいくらでもあります。船橋の新成人には、困っている人々、命がけで戦っている人々、笑うことの許されない人々への配慮ができる大人になってほしいと、心から願います。ご家族がご用意くださった晴れ着ですら、着ない方が美しい時があることを知ってほしいと思います。

 会場を広くしても、受付・出入り等、密を避けることは困難かと思います。集まった新成人たちへの「声を上げないこと」「帰宅途中で飲酒をしないように」との注意も、「守ってもらえる」という前提は、危機感があまりに希薄です。つややかな振り袖が集まる像は、涙を流しながら戦っている戦友(注・医療関係者)たちには刃物と同じです。

 船橋の新成人には、思いやり、配慮が理解できる、自分らしく社会貢献できる、そんな大人になってほしいです。

 私の娘も二十歳です。晴れ着も準備しています。家族で祝おうと思います。

 ちょうど私くらいの、50歳前後の親御さんを持つ方たちを集めるのは罪だと思います。若くて、軽症・無症状の子供がウイルスを家庭に持ち込み、医療・福祉の崩壊が起きてもまったく不思議はありません。医療従事者のマンパワーを奪いかねないことを強く憂慮できない行政は問題だと思います。

 私が心配する事態にはならない可能性も十分あります。しかし、憂慮すべき事態を想定する力、配慮できる力があれば、その可能性だけで行動を変えるのが正しい大人です。

 (成人式)中止の基準が「緊急事態宣言の発出」「国または県より開催の自粛要請」というのは「自分たちで何も考えられません。責任を持った決定は船橋市にはできません」と言っているようなものです。

 誰かに決めてもらう、周りの人に従うのは卒業して、新成人に「大人のなんたるか」を見せられないのでしょうか。<了>

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