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横浜FCを、歴史に残すために。 松本雄一×みる兄さん[後編]

情報提供:アズリーナ

J1横浜FCでマーケティング部に所属する松本雄一氏と、一部上場企業にてブランドマネージャーを務める「みる兄さん」に、コロナ禍におけるJクラブのマーケティングについて伺う対談。

前編では、緊急事態宣言前後においての立ち回りについて伺った。後編では、みる兄さんが今後の横浜FCに期待する取り組みについて、ホームタウンとの関わり、長引くコロナ禍での今後の展望や課題について踏み込んだ形で伺っている。

(取材日:2020年11月18日 聞き手:澤山モッツァレラ)

 

子どもには「集められる何か」を

―ブランドマネージャーという立場で見たとき、みる兄さんは横浜FCに何を期待されていますか?

みる兄さん そうですね、横浜FCさんはすごく新しいことにチャレンジしてると思うんです。

例えば、ソーシャルメディアでの取り組み。チケットの売れ行きをビジュアル化したり、映像コンテンツもYouTube用に編集したものを出したり……来年以降、人が集まることの障壁が減ったタイミングで、こうした取組みは花開くんじゃないかなと。

ライト層を拡大するための準備期間として、SNSやデジタルでやられていることは非常に頼もしく思っています。

スタジアム内でも、フードデリバリーを始めたりサッカージャンキーさんの露店をやったり、イベントをちょっとずつ増やしたり。大胆なことをやりづらい状況で、いろいろ手を変えているなと思います。

 

―高い評価をされていますね。その上でも、課題感があると。

みる兄さん そうですね、思うのは体験価値のアップデートですね。特に、バックスタンドとメインスタンドのファミリー客がリピートするような施策は大事だと思います。

例えば、子どもたちってシールとかスタンプが大好きなんですよ。ウチの子どもや、友達を見ててもそう。「(シールやスタンプを)くれるから行きたい」って。

幼稚園から小学校低学年ぐらいの子あるあるで、キャラクターコラボとかである必要もなくて。その場に行った証とか、集められる何かをもらえる、というのは子どもたちにとってすごくテンションが上がることなんですよね。

ポケモンスタンプラリーで、東京から横浜、千葉まで子どもに連れて行かれたことがあって。あの集客力はすごいんですよね。お子さんに対してスタンプ帳を一冊渡して、来た証を作る。毎回スタンプを押してあげても、コーナーを設置するだけでもいい。

それで、10個集めたら何かがもらえたり。そういうちょっとしたスタジアムに行く楽しさで、お子さんを増やしていくのはいいんじゃないかなと思います。

 

―確かに、ラジオ体操でも体操自体はほとんどサボってるのに、スタンプを押す列には子どもたちがすごく並んでたりしますね(笑)。 

みる兄さん 来年も厳しい状況が続くと予想される中で、体験価値を上げることは重要だと思いますね。

松本 ありがとうございます。まだクラブで話はできていませんが、スタンプラリー然りクラブ職員との距離を近づけるような施策は必要だと思いますね。例えば僕がカードを持っていて、新幹線の車掌さんみたいに配ったり。

―あいさつしてきたお子さんに、1枚あげたり。

みる兄さん いいですね、スタッフさんとの距離が近づくのは。コアなファンとの繋がりが増えていきますよね。

一体感の作り方は、まだまだ向上の余地があると思います。とはいえ、ハーフタイムなどにファンをクローズアップしてビジョンに映したりとか、途中途中の盛り上がりは増えてきていると思いますね。

松本 あのアイデアもサポーターの方と、zoomでクラブミーティングをする中で生まれました。サポーターはいま声が出せないので、その中でも「選手、ベンチに向かってアピールがしたい」という意見があって。その場で出たサポーターからの意見を翌週のホームゲームに即反映させました。感染対策でスタジアムのピッチ脇もゾーニングしているのでカメラワークが満足にできないのですが、できる限りでやっているところですね。

みる兄さん あのアナログでやってる感じも、味があっていいと思いますけど(笑)。

地域経済を動かすプラットフォームに

―コロナ禍になって、様々なことを考えられたと思います。特に地域に対してどういう役割を果たすか、という部分はいかがですか? 

松本 そうですね、地域に対して横浜FCとしてお邪魔するとすごく喜んでいただけることが多くて。ホームタウン活動は、引き続き大事にしないといけないと思っています。

ホームタウンへの貢献において、横浜F・マリノスさんやY.S.C.Cさんとの違いをどう打ち出すか。われわれはJ1にいるメリットを生かし、ローカルの情報を届けるプラットフォームになること、地域経済を動かすことに関与できると思っています。

現在、ホームタウン活動は数をこなせていないのが現状です。選手に協力してもらって学校訪問などをもっと増やせると思いますし、事業部のスタッフも質量双方で貢献できると思います。

もちろん、選手のリソースには限界があります。また、選手個人より「横浜FCというクラブが何かをしてくれた」という認知のほうが強い現状もありますね。ファンベースが足りない中なので、こういった地道な活動でファンベースを増やすきっかけにしたいですね。

みる兄さん そうなんですよね。選手個人にファンがつくことも、あるとは思うんですが。

例えばウチの息子が保育園に通ってた頃、ベイスターズの元首位打者である鈴木尚典さんが来園してくれたんです。でも、子どもは誰が来たかは覚えてないんですよね。「ベイスターズの人が来た」って記憶だけ残ってるという。

スポーツクラブとして横浜って名前がついている中で、子どもと接点を持ったときに親まで伝わるのは「横浜FCが」なんですよね。

僕も、松本さんきっかけに横浜FCにもっとコミットするようになりました。事業部の方の存在は、大きいと思います。横浜市民は地元が好きですし、横浜を盛り上げようとしてくれる人たちのことも当然ながら好きになると思うんですね。

松本 そうですね、競合クラブに及ばない部分はありますが、彼らに見えていないより細かい地域性の部分、ホームタウン活動と、サッカーの質を両立できたら。事業部と強化部の両輪が回って、フロントの仕事ぶりがチーム成績につながるような形になれば最高だなと。

「ウチは、単なるクラブじゃない」

―松本さん、今後クラブのマーケティング担当者としてどういう展望を持っておられますか?

松本 考えていることは、めっちゃあるんですよね。コロナで制限が無ければ全部やりたい。横浜FCというチームの価値を、日本サッカーをよくすることに使えるようにしたいですね。

カズさんをはじめレジェンドが多いクラブというイメージはあると思いますが、彼らの知名度に頼るのではなく、今足りていないファンを増やすためのホームタウン活動の質・量を担保する。世代を超えて、何世代にもわたってスタジアムに戻って来てくれるファンを作っていく。

デジタルの活用も、新しいものを取り入れるというよりは「地域でやったことをしっかり発信する」という基本に立ち返りたいですね。

 

―みる兄さんは、サポーターとしてどういう部分に期待されていますか? 

みる兄さん 映像などクリエイティブにもっとチカラを入れてほしいですね。

もちろんリアルをコツコツやっていくのは大事です。ただ、横浜FCって53歳のカズさんも居れば、19歳の斉藤光毅選手(2020シーズンを最後にベルギーリーグのロンメルSKへ移籍)みたいな若手のスターもいる、ドラマチックなチームでもあると思うんですよ。

ドキュメンタリーなり映像のチカラを使って人を巻き込んでいく、そのストーリーをいかに描くか。クリエイティブの費用対効果を算出するのは難しいので、予算取りは大変だと思いますけども。

結局、やっていることをいかにグロースし、どう広げるかというと「人」なんですよね。リアルの口コミと両輪で広げていくためには、映像とクリエイティブのチカラは非常に大きいと思います。

今後1~2年は、コロナの影響でなかなかリアルが体験しづらいと思っていて。今いるファンの体験価値をもっと高めるためにも、映像に張っていいのではと思います。

―一方で、費用面も課題ですね。

みる兄さん それこそ、クラウドファンディングを使ってほしかったりしますね。物品やチケットだけを売るのではなく、いま形になっていないものを作るための投資として。

ビジョンや夢、「その船に乗りたい」と思わせるようなこと。それがあるからチケットを買ってもらえるし、応援してもらえる。

チームには、歴史やストーリーがたくさんあります。「だから僕らは戦う、皆さんには共犯者になってもらいたい」というメッセージを出すことはすごく大事。そこに集中してほしいなと思います。

 

―実際、ドーハの悲劇やジョホールバルの歓喜があってサッカーにとりつかれた人はたくさん居ます。最近ではトッテナムの「ALL OR NOTHING」も話題になりました。横浜FCさんでは、そういうコンテンツは難しいですか?

松本 実はまさにそれはやりたいことで、もちろんトップチームとの調整は必要ですが「ウチは単なるクラブじゃない、日本サッカーに何かを残すべきクラブ」というのは多くのファンが感じていると思いますし前向きに動きたいですね。

みる兄さん 実現してほしいですね。現場の人たちからすると「なんでこんな面倒なことするの、ここまで見せるのはどうなの」って声は上がると思うんです。でも、それを越えるものを見せて、かつDVDなり販売で収益化できるという形は示せると思うんですよね。

もちろんバランスなんですが、スポーツはショーでもあって。共犯者たるファンとの繋がりを強化するうえで、ストーリーというのは最大の武器になると思います。

 

―実現に期待したいです。本日は、お忙しい中ありがとうございました!

 

<了>


情報提供:アズリーナ

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