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爪水虫などの皮膚治療薬に睡眠導入剤の成分が混入し、服用した患者が意識を失うなどの深刻な健康被害に見舞われた。
薬への信頼を根底から揺るがす重大な事態だ。原因を徹底的に究明し、再発防止につなげなければならない。
混入させた福井県の製薬会社「小林化工」によると、健康被害は200人以上に及ぶ。服用後の死者も2人おり、同社は因果関係を調査中だ。車を運転中に意識が薄れるなどして起きた事故も20件を超える。
治療薬の製造過程で目減りした分を追加投入しようとして、作業員が原薬ではなく睡眠導入剤を入れた。
睡眠導入剤は原薬と形状が違う容器に入っており、取り違えた理由は分かっていない。そもそも追加投入は、厚生労働省が承認した製造手続きでは認められておらず、論外だ。
会社の体制にも問題がある。
作業員は睡眠導入剤の投入を記録に残していた。出荷前のサンプル調査では異物混入を疑わせるデータも検出されていた。
いずれも組織としてチェック機能が働いていれば、異常に気づき出荷を防げたはずだ。
厚労省は福井県などと小林化工を立ち入り調査した。製品の工程や安全管理に問題がないかを確認し、厳正に処分する方針だ。
今回の異常事態は患者の健康被害に気づき、販売停止を強く求めた医師らの通報で発覚した。
岐阜県高山市の医師は薬の販売会社に電話で連絡をしただけではなかった。事態の重大性を伝えるため、服用後に交通事故を起こした患者ら7人の症例を書面にまとめ担当者に手渡した。
混入した薬は販売開始から十数年がたち、効果について評価が定まっていた。医師や患者は同じ薬品は同一の品質で供給されていると信じている。通報が遅れていれば、被害は拡大した恐れがある。
国の被害対策は新薬に偏りがちだ。特に副作用の情報収集は、医薬品の販売開始後6カ月間が中心になっている。
今回の問題を教訓にして、新薬以外でも被害が起きる可能性を前提に、情報収集のあり方を検討する必要がある。
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