コロナで打撃、GoToに沸き……旅行ガイド「るるぶ」と「まっぷる」の1年は

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数多くの旅行誌が発行されているが、GoToトラベルが一時停止され、書店で手に取る人は少ない=東京都千代田区の丸善丸の内本店で2020年12月22日、五味香織撮影
数多くの旅行誌が発行されているが、GoToトラベルが一時停止され、書店で手に取る人は少ない=東京都千代田区の丸善丸の内本店で2020年12月22日、五味香織撮影

 新型コロナウイルス感染者数の最多記録が毎日のように更新され、「GoToトラベル」も一時停止となった年の瀬。私たちは、旅行はおろか帰省もままならない中で新年を迎えようとしている。新型コロナで旅行業界は大打撃を受けたが、その一角を担う旅行情報誌にとっても、2020年は激動の1年だった。国内版と海外版で毎年約300点が発行される「るるぶ情報版」と、地図を土台としたガイド本「まっぷるマガジン」の編集長たちに、コロナとの1年を振り返ってもらった。【五味香織/統合デジタル取材センター】

動き「バタッと止まった」

 「誰も見たことがない数字が並んでいました」。「まっぷるマガジン」シリーズを発行する昭文社旅行書編集部の井上健太郎部長は、苦笑する。緊急事態宣言が出た4~5月、「まっぷる」シリーズをはじめ、旅行情報誌の売り上げは悲惨だった。

 昭文社は1960年から地図を出版してきた「地図の会社」だ。まっぷるマガジンは89年、バブル期のレジャーブームの中でスキーリゾートの情報誌から始まり、エリアごとの特集を展開してきた。地図作りの蓄積を生かし、さまざまな縮尺で見やすいデザインの地図を掲載し、慣れない旅先での道案内に役立つことを重視した編集を続けてきた。

 しかし、そんな情報誌が売れなくなった。「5月の大型連休中、テレビでガラガラになった新幹線の車内の様子が映っていましたが、本の売り上げも同じ状況でしたね。動きがバタッと止まりました」

 大型連休や夏休み、年末年始といった長期休暇は、旅行誌にとってもかき入れ時となる。旅を計画する休み前に購入する人が多いためだ。4月7日に出された緊急事態宣言が、その「稼ぎ時」を直撃した。

現地取材にも行けない

 JTBパブリッシングが発行する「るるぶ情報版」シリーズも、同様の事態に陥った。1984年からエリア別情報誌として発行され、2010年には「発行点数世界最多の旅行ガイドシリーズ」としてギネス世界記録にも認定された。その後も毎年、国内版約200点、海外版約100点を刊行し、21年には通算6000号に達する見込みだが、「地域を問わず旅行ができない」という前代未聞の状況の中、書籍を手にする人は激減した。

 しかも、影響は書籍の売り上げだけではなかった。東京や北海道などのエリアを担当する山田宏輝編集長は「4~5月は、夏に出版する書籍の取材に行く時期なのですが、宣言の影響で行きにくくなってしまった。取材先のお店が閉まったり、ホテルも対策を取れていなかったりして、どうしていいか分からない状態でした」と振り返る。

 エリア別の旅行情報誌は毎年1回、同じ時期に改訂することが多い。しかし、掲載する施設や店の閉鎖、イベントの中止も続き、確かな情報が得られない。改訂の見合わせや延期を余儀なくされるエリアが相次いだ。山田さんは「情報を求めている人が、どれだけいるのだろうか」という疑問も抱いたという。

 感染リスクを考えると、従来なら「目玉」だった特集も組めなくなった。沖縄や九州を中心に担当する平原聖子編集長は「このお店や施設を載せていいのだろうかと迷うことが多かった」と明かす。例えば、沖縄の民謡酒場は人気の観光スポットだが、屋内で生演奏や歌を聴き、飲食や踊りを楽しむ場だ。福岡・博多名物の屋台も欠かせない情報だったが、狭い屋台にお客が並ぶので「密」になりやすい。

 記事の見出しや書き方も悩んだ。…

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