「ワクチンの分配格差解消を」 詫摩佳代・都立大教授の警鐘

新型コロナウイルスのワクチンが欧米などで承認され、接種が始まった。だが、途上国などに行き渡るには時間がかかる見通しだ。保健衛生に関する国際政治に詳しい詫摩佳代・東京都立大教授は、ワクチン分配を巡る格差の解消なしに、世界規模での感染収束と経済回復は見通せないと警鐘を鳴らす。【聞き手・八田浩輔】
日本も国益の確保と国際協力とのバランスに苦悩
――新型コロナのワクチンの公平な配分を目指す初の国際枠組み「COVAXファシリティー」が発足しましたが、米露は参加を見送りました。COVAXは機能しますか。
◆COVAXは参加国が資金を拠出して自国用にワクチンを購入する枠組みと、国や財団などの拠出金で途上国にワクチン供給を行う枠組み(COVAX AMC)が組み合わさったものだ。明るい話題としては、欧州諸国やビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団などが拠出し、COVAX AMCで20億ドルを調達するという当初目標が達成された。また、多くの途上国ではワクチンの副作用に国が賠償を負う制度が整っていないが、COVAXの中に損害賠償基金が設立されたのも評価できる。
だが、ワクチンは開発に成功しても直ちに大量生産できない。先進国は製薬企業と契約を結んで自国民向けのワクチンの先行確保を進めている。このため、2021年のうちに途上国の人すべてにワクチンが行き渡るのは難しい状況だと思う。
――何がワクチンの公平な分配を阻むのでしょうか。
◆ワクチンは価格が高いため、各国の経済力の違いで差が出る。また、多くの途上国では製造する技術もない。人道的な観点から途上国にも平等に分配されることが望ましいと多くの人が思っているが、量が限られている現状ではどの国も自国民の分の確保を最優先する。こうした国益重視の姿勢が分配の格差を生み出している。米国はトランプ大統領の下で自国第一の姿勢が顕著となったが、国際協調を重視してきた日本や欧州も、緊急時における国益の確保と国際協力とのバランスに苦悩している。
――製薬大手のワクチンの特許も公平な分配を妨げるとの指摘があります。
◆ワクチンの特許の制限について世界貿易機関(WTO)で協議が行われていたが、先進国と途上国との溝が埋まらず結論は21年に先送りされた。製薬企業にとって特許が生む収入は研究開発の大きな動機となっている。容易に手放せるものではなく、緊急性の高い新型コロナのワクチンでもそれは変わらない。製薬大手を抱える欧米や日本が特許の…
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