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舞台「洞窟(ガマ)」が問うもの 沖縄戦から75年 極限状態でせめぎ合う生と死

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現地補充兵、山城2等兵役の花城清長(左)と子供を抱えた仲村渠カナ役の知花小百合=エーシーオー沖縄提供
現地補充兵、山城2等兵役の花城清長(左)と子供を抱えた仲村渠カナ役の知花小百合=エーシーオー沖縄提供

 暮れも押し詰まるなか那覇に飛んだのは、沖縄戦を描いた舞台をどうしても見たかったからだ。コロナで明け暮れた2020年は、いや応なく命の重み、そして演劇の存在意義を考えさせられた。沖縄戦75年、そしてコロナの年。エーシーオー沖縄「洞窟(ガマ)」の問いがことさら重く感じられる。

 「ガマ」とは、沖縄本島に無数に存在する自然洞窟のこと。第二次世界大戦末期、米軍の沖縄上陸作戦が展開されるなか、住民らはガマに逃げ込み、長期間の避難生活を送った。「鉄の暴風」と呼ばれた米軍の猛攻から逃れ、命をつないだ場所である。一方で、米軍の火炎放射器によってや、日本兵に自決を強要され、亡くなった人がいたという証言がある。

 沖縄県民の4人に1人が亡くなったと言われる沖縄戦から75年。嶋津与志の戯曲「洞窟」は、沖縄本島南部のあるガマを舞台に、避難住民や本土から来た日本兵、現地補充兵、学徒看護隊員らの生と死の極限状態での人間ドラマが描かれる。藤井ごうの脚色・演出で12月24~27日、那覇市のひめゆりピースホールで上演された。

「ひめゆり学徒隊」の母校跡地のホールにガマ内部を再現

 物語は本土の若い女性、大城結子(仲里綾香)が、祖父勝男が戦争中にいたと思われるガマを訪れたところから始まる。そこで祈りをささげる沖縄のおばぁ(座喜味米子)もガマの生き残りらしい。おばぁの話を聞くうち、沖縄戦末期のガマへと観客もろとも引きずり込まれていく。夢幻能を思わせる形式だ。

 劇場に入るとまず、舞台装置が目を引く。初演は1980年。沖縄戦50年の節目の95年には八重瀬町(旧具志頭村)にある「ガラビ壕(ごう)」内に50席の客席をしつらえて上演された。それから25年ぶりの上演となった今回は、ホールに起伏あるガマの内部を再現(乗峯雅寛美術)。ダイナミックで濃密な空間が、観客もガマの避難民であるかのような思いにさせる。そもそも会場となった…

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