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「生まれてこないほうがよかった」  世界で注目「反出生主義」とは何か

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森岡正博・早稲田大教授=本人提供
森岡正博・早稲田大教授=本人提供

 「人間は生まれてこないほうがよい」……。そんな「反出生主義」という思想が静かなブームになっている。海外では数年前から反出生主義の言論が目立ち始め、日本でもコロナ禍の今、関連書籍が売り上げを伸ばしているという。古代からある思想だが、なぜ今、反出生主義なのか? 反出生主義に関する著作がある哲学者の森岡正博・早稲田大教授に聞いた。【上東麻子/統合デジタル取材センター】

 ――そもそも反出生主義とは何でしょう。

 ◆簡単に言うと、人間が生まれてきたことを否定し、新たに子どもを生み出すことも否定する考え方です。実は古代からさまざまな文献に顔を出してきました。最近ではインターネットを通じて世界に拡散されています。南アフリカの哲学者、デイビッド・ベネターが有名ですが、地球環境問題の悪化を深刻に受け止め、子どもを作らないことを推奨したり、人類絶滅を目指す運動もあります。2019から20年にかけて、反出生主義は世界的なカウンターカルチャーのトピックとして浮上しています。

宗教の力が弱まってきた

 ――国内では19年11月に雑誌「現代思想」で反出生主義が特集され、その後も関連本が売れています。森岡さんは20年10月に「生まれてこないほうが良かったのか?」(筑摩書房)という本を出版しました。なぜ今、反出生主義が注目されているのでしょうか?

 ◆「生まれてこないほうがよい」「人類は子孫を生み出さなくていい」という考え方が古くから脈々と受け継がれているのは、それが理性で生死を考えようとする人間の本質に関わるからだと言えます。生まれなければ苦しみは一切ないから、すべての人間は子どもを産むべきではないとする思想に「反出生主義」という名が付けられ、共感が広がってきたのは最近のことです。子どもを産むのは子どもへの暴力であるとの考え方も見られます。

 古来の思想が「現代風」の現れ方をしている可能性はあります。日本では今、多くの人が「生まれる前は無だった」と考えているように思います。生まれたから苦しみを感じるわけで、それ…

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