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号外新型コロナ、国内の死者5000人に
社説

臨む’21 コロナと科学 感染症に強い社会めざし

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 新感染症のパンデミック(世界的大流行)はいつ起きてもおかしくない。わかっていたはずなのに、現実は想像を超える。世界が思い知らされたこの1年である。

 昨年、私たちは多くの経験を積み、新型コロナウイルスと対峙(たいじ)するための新たな知識を手にした。にもかかわらず、感染制御は今なお苦戦を強いられ、先行きが見えていない。

 無症状や軽症の人が感染を広げるこのウイルスのやっかいな性質のためでもあるが、それだけではない。

 2009年のインフルエンザ・パンデミックを経て、保健所や検査体制の強化、医療の整備、意思決定プロセスの明確化、情報発信の改善など必要な備えはわかっていた。それなのに対策は置き去りにされた。感染症へのリスクを高める都市化やグローバル化への警戒感も薄かった。

 こうした複合的要因がもたらしたのが今の日本の状況だ。

専門知を軽視する政治

 遺伝子技術で早期に開発されたワクチンに期待がかかるが、すぐに状況が好転するわけではない。これだけに頼るのは誤りだ。

 短期的には、昨年からの流行第3波を乗り切るために最善を尽くさなくてはならない。流行が始まって以来、初めて経験する冬であることにも留意する必要がある。

 英国の変異ウイルスのように、新たな要素も加わり、感染の様相が大きく変わる可能性もある。

 そこで、再考しておかねばならないのが科学と政治の関係だ。

 当初から、科学と政治の関係には課題があった。さらに第3波で浮き彫りになったのは、専門知に対する政治の無理解だ。

 専門家の分析によれば感染拡大の火元は東京を筆頭とする大都市だ。感染抑止には人々の移動抑制に加え、飲食店の営業自粛や時間短縮が有効であることがデータからわかっている。

 ところが、菅義偉政権は経済対策に重きを置き、感染対策が後手に回った。首都・東京をあずかる小池百合子知事も反応が鈍かった。

 感染抑止の要諦は迅速に手を打つことだ。決断が遅れるほど医療にも経済にも悪影響を及ぼす。

 拡大傾向が頭打ちになっても、感染抑止策を性急に緩めないことが肝要だ。第3波の大きな波は、第2波が下がり切らないうちに規制を緩めた結果でもある。失敗を繰り返さないようにしたい。

 感染抑止策と経済のバランスをどうとるか。困難な課題は今後もつきまとう。感染防止策の徹底で死者を最小限にするか、経済を回すことで困窮者の自殺を減らすか。政府の対策はどちらに重きを置くかを迫っているように見える。そのような「命のトレードオフ」は受け入れられない。

新経済モデルの模索を

 感染防止を主眼とした上で、経済的困窮者を救うきめ細かな手立てを講じるべきだ。そのために感染症対策を組み込んだ新たな社会経済モデルを政府も経済界も検討してほしい。

 コロナを乗り切った先にある次のパンデミックへの備えも怠らないようにしたい。中長期的に感染症に強い社会を作っていく。それは単に、コロナ前の生活を取り戻せばいいということではない。

 感染症対策を国の安全保障と考えるなら、有事に必要な体制を平時から組み込んでおく必要がある。医療や保健所の体制強化に加え、どうすれば平時と緊急時で体制を柔軟に変化させられるか。政府は知恵を絞ってほしい。

 感染症全般に対応できる公衆衛生人材の育成、ワクチン開発や検査の基盤技術の確立も大事だ。

 さらに根源的な課題として、社会の構造、人々の暮らし方そのものを変えることも重要だ。

 都市への一極集中、満員電車での長時間通勤、人々が一斉に移動する休暇。新型コロナ流行の初期にはこうした社会を変えたいという切実な思いが共有された。

 その後、大きなうねりになっているとは言えないが、少しずつでも変革を進めたい。コロナを機に急速に普及した情報技術も後押ししてくれるはずだ。

 パンデミックを招く状況を改善する努力も欠かせない。新感染症の多くは人と動物の両方に感染する病原体が原因となる。

 森林伐採、農地開発などで野生動物との接触が増えれば、パンデミックのリスクも上がる。生態系を守ることが人間社会を守ることにもつながるはずだ。

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