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ロシア政府が市民の政治活動の制限を強めている。これまで外国からの財政支援を受けるメディアやNGOなどの政治活動を規制してきた法律を強化し、個人にも対象を拡大。国内の反政府活動家を狙い撃ちして取り締まる恣意(しい)的な運用が懸念されている。背景には、9月に予定される下院選を前に反体制派への圧力を強化する狙いも見え隠れする。
ロシアの上下両院は2020年12月、「外国からの干渉」の排除を理由に市民の政治活動を制限する複数の法案を相次いで可決した。プーチン大統領も署名し、今後、順次発効する見通しだ。
特に物議を醸したのが、外国からの財政援助を受けて政治活動を行う団体などに活動内容の報告などを義務づける「外国エージェント制度」の強化だ。12年に導入され、主に人権団体などのNGOと一部の外国政府系メディアを対象にしていたが、今後は法人格を持たない団体や個人にも適用される。
法改正により、外国エージェントに該当しながら司法当局に届け出をしない場合は「2年以下の禁錮刑」などの罰則が科される。ロシアの報道機関は、記事の中で当該団体・個人がエージェントであることを記載することが義務づけられる。エージェントに登録された個人に限らず、その援助を受ける人物が選挙に出る場合も広報資料などにエージェントとの関係を明記することが求められる。
外国エージェントの要件となる「政治活動」や「外国からの援助」などの規定には曖昧な面もあり、人権活動家からは恣意的な運用を懸念する声が上がっている。露紙ノーバヤ・ガゼータは「必要があれば、どんな市民にも責任を問うことが可能になる」との専門家の見方を紹介した。
またインターネット上の規制も強化される。欧米諸国からフェイク(偽)情報の流布が指摘される「RT」など露政府系メディアの記事について、最近はそれを検閲するソーシャルメディアの活動も盛んだ。だが今後、こうしたソーシャルメディアをブロックする権利も当局に与えられるという。
露メディアによると、一連の法改正についてボロージン下院議長は「自由や権利の侵害ではなく、国益を守るためのものだ」と強調。プーチン氏も「外国に内政干渉をさせないためだ」と述べ、法案の正当性を主張している。だが、24年の大統領選の前哨戦とされる9月予定の下院選対策との見方も強い。新型コロナウイルス感染拡大を抑え込めないプーチン氏の支持率は下落傾向にあり、下院選で与党「統一ロシア」が議席を減らすとの観測も出ている。
元下院議員で、プーチン政権を批判する野党指導者のグドコフ氏は毎日新聞の取材に「法改正は選挙から反体制派候補を排除し、市民の抗議活動を抑えつけるものだ。外国の介入は口実にすぎない」と指摘する。
政治学者のスタノバヤ氏は自身の論考で、20年8月に起きた反体制派指導者ナワリヌイ氏への襲撃事件にも触れながら「プーチン政権は反体制派の活動を(外国と協力する)国家反逆行為になぞらえ、リベラル系野党の存在を事実上禁止しようとしている。市民の利益よりも体制の利益が優先される傾向が強まっている」と指摘している。【モスクワ前谷宏】
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