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社説

臨む’21 これからの国際社会 協調の秩序取り戻す時だ

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 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は米中対立を激化させ、国際社会の亀裂を深めた。世界は100年に1度の大変革期といわれる。分断を乗り越え、安定した秩序を取り戻す時だ。

 冷戦後、米国主導の自由主義的な国際秩序が世界を安定に導くという楽観論が広がった。民主主義や人権などの価値観、自由貿易、多国間主義に支えられた秩序だ。

 しかし、米国の指導力が低下する一方、権威主義的な中国やロシアが台頭し、国際秩序の行方は混沌(こんとん)としてきた。コロナ禍はそうした傾向をいっそう加速させた。

 米国の再興を掲げたトランプ米大統領はコロナ対策に失敗し、国内の分断を広げた。欧州でもコロナ禍が国家間の往来をマヒさせ、ハンガリーなどが権威主義的色彩を強めた。英国の欧州連合(EU)からの離脱と合わせ、欧州統合の夢は後退した。

ワクチン分配で協力を

 近く発足するバイデン米次期政権はトランプ時代に毀損(きそん)された国際秩序の修復を目指す考えだ。多国間主義の復権や同盟国との関係強化を打ち出している。

 貿易紛争にとどまらず、軍事や次世代技術をめぐって対立を深める中国への対応が大きな課題だ。米国内では党派を超え、中国への警戒感が高まる。バイデン氏も民主主義や人権に関わる問題では中国に厳しい姿勢で臨む考えだ。

 しかし、対決一辺倒だったトランプ政権とは色合いが異なる。コロナ禍や気候変動への対応、北朝鮮問題では中国と協力を進める考えも示している。

 米国に単独で世界を主導する力はない。頼りにする同盟国の多くは米中対立の激化を望んではいない。新冷戦を避けるには中国との緊張緩和が必要になるだろう。

 バイデン氏は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に復帰する。中国の習近平国家主席も脱炭素社会の建設に意欲的だ。11月に予定される国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を、協力のきっかけにしてはどうか。

 コロナ対応で米中が対立を続けたことは双方にとって大きな失態だった。途上国を含めた世界的なワクチン分配で協力することも信頼を取り戻す一歩になりうる。

 中国の出方が協力の成否を左右する。中国はコロナの感染拡大を封じ込め、世界に先駆けて経済の回復を進める。7月の共産党の創立100年で共産党体制の優位性を示したい思惑もうかがえる。

 しかし、米中対立が深刻化すれば、世界経済のデカップリング(分離)や、歴史的に覇権国と新興大国が衝突を繰り返してきたとする「ツキディデスのわな」が現実化しかねない。

 中国の傅瑩(ふえい)外務次官は米紙への寄稿で、バイデン次期政権に「協力的な競争」を呼びかけた。競争は避けられないが、衝突を望んではいないというわけだ。

 協調態勢の再構築にはルールに基づいた行動が必要だ。米中の貿易紛争も米国の保護主義だけが原因ではない。知的財産権の侵害など中国にも大きな責任がある。

日本は米中橋渡し役に

 南シナ海や東シナ海での独善的な行動、香港、新疆ウイグル自治区などでの人権抑圧、台湾への軍事的圧力の強化。国際法や先進国が共有する価値観を無視するような中国の行動が国際社会の警戒感を高めている。

 「包囲網」が形成されるかどうかは中国の対応次第だ。中国が地域の安全保障や平和維持に積極的に関与していけば脅威論は薄まるだろう。軍事や安全保障で対話を進めるには信頼醸成が欠かせない。軍備管理も米中露の枠組みを考えるべき時期に来ている。

 巨大IT企業やサイバーセキュリティー、デジタル通貨、宇宙開発などへの対応では新たなルール作りが求められている。実効性を高めるには中国やロシアの参画が必要になる。

 グローバル化への反動もあり、世界的にナショナリズムに回帰する動きが目立つ。しかし、国際協調を顧みない自国だけの利益追求が戦争につながってきた歴史を忘れることはできない。

 日本の将来にとっても米中関係の安定化やルールを基盤とする国際秩序の確立は極めて重要だ。

 東アジア研究で名高いエズラ・ボーゲル氏は今後、米中の橋渡し役としての日本の役割が高まると期待を示していた。簡単ではないが、粘り強くその役割に取り組む意義は大きい。

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