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布団で一緒に眠った時の父のぬくもりは覚えている。「でも、いろんな記憶がおぼろげなんですよ」。佐々木綾香さん(20)は下を向いた。宮城県石巻市で教師をしていた父の孝さん(当時37歳)は、東日本大震災の津波で犠牲となった。祖父の末雄さん(当時72歳)も自宅と共に流された。家族のビデオや写真も失い、10年近い月日が思い出にもやをかけていく。
「よく小学4年生の自分に耐えられたと思います。逆に心が成長した今なら耐えられなかったかも」と振り返る綾香さん。11歳の時、国会議事堂で行われた「子ども国会」に招待された。父の無念を訴え「亡くなった父が私に生きる力を与えてくれている」と話した。
東京の大学に進み1人暮らしをする今、その頃よりも喪失感は大きいという。成長した今の感性で話したい。もう一度甘えたい。部屋にいると胸に迫ってくる時がある。「とにかく、生きていてほしかったなあ」
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、祖母や母、弟を思い正月には帰省しなかった。成人式への参加も取りやめた。それでも大学3年となる4月から「森林環境」を専門的に学ぶことが楽しみだ。将来はその経験を生かし、被災した故郷に貢献したい、という思いも育ってきた。
優しかった父なのに、不思議と記憶に残っているのは「丁寧に」「真剣に」など注意されたことばかり。その言葉たちがこれからも、成人を迎えた綾香さんの背中を押していく。【梅村直承】
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