小惑星リュウグウの岩石のかけらを2020年12月、カプセルで地球に届けた探査機「はやぶさ2」。世界初となった「小惑星への2度の着陸」というミッションの成功に貢献したのは、アナログな作業をひたすら続けた惑星科学の専門家たちだった。「平らだと思っていたら、ゴツゴツした岩だらけだった」という想定外に遭遇し、安全に着陸させるという難題をどう克服していったのか。【信田真由美/科学環境部】
はやぶさ2には、探査機の運用を主に担当する「技術チーム」と、科学的な観測・分析を担当する「科学チーム」がある。技術チームは宇宙航空研究開発機構(JAXA)のメンバーが多くを占め、科学チームは半分以上が大学の研究者だ。リュウグウの着陸地点は、科学的知見を得るにはどこが適切かという点と、安全性などを考慮して、この二つのチームが合同で検討し、決定していた。
このうち科学チームで着陸地点を見つけるのに大きな貢献をしたのが、19年の2月と7月の着陸実施時に名古屋大の講師だった諸田智克・東京大准教授だ。着陸にむけ、JAXAの会議にウェブ会議システムで毎週、参加していたが、はやぶさ2のリュウグウ到着(18年6月)から1カ月くらいすると「これは厳しい、やばいなという気持ちになった」(諸田さん)。リュウグウの形状は想定していたジャガイモのような形ではなく、そろばん玉のような格好で、表面は平らな砂地ではなく、岩が多くてゴツゴツしていたためだ。
それではどうしたのか。
惑星科学の中でも「惑星地形学」という分野を専門としていた諸田さんは、ほかの専門家数人とともに、1万~2万あるリュウグウの岩を数えて全体の分布を把握することから始めた。そうして岩の少ない領域を見つけ出し、探査機の目印となるボール「ターゲットマーカー」を投下した。18年10月のことだった。
大変だったのはここからだ。目印のターゲットマーカーはあくまでも「参考地点」でしかなく、実際に安全に着陸できる場所はどこか、探さなければならなかった。そこで思い出したのが…
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