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常夏通信

その77 戦没者遺骨の戦後史(23) 硫黄島ではやらないDNA鑑定 国会で激しい論戦

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夕日に染まる摺鉢山。米軍の激しい砲爆撃で、山の形が変わったとされる=東京都小笠原村の硫黄島で2020年10月24日午後4時52分(代表撮影)
夕日に染まる摺鉢山。米軍の激しい砲爆撃で、山の形が変わったとされる=東京都小笠原村の硫黄島で2020年10月24日午後4時52分(代表撮影)

 「沖縄でできていることを、硫黄島でしないのはおかしい。差別だ」。沖縄で戦没者遺骨の収容を40年近く続けるボランティア団体「ガマフヤー」の代表、具志堅隆松さん(66)は、硫黄島で戦死した近藤龍雄さんを巡る私の取材に、そう話してくれた。「遺品があろうがなかろうが、遺骨のDNA鑑定をすべきです」とも。

「差別だ」

 政府は2003年から、戦没者遺骨のDNA鑑定を始めた。現状、遺骨の身元を科学的に特定する上で、唯一の方法である。これまでに1000件以上の身元が分かっている。ほとんどがシベリアなどで戦後、ソ連に抑留され亡くなった人の遺骨だ。それ以外は沖縄が5件、硫黄島(東京都小笠原村)が2件などと少ない。少ない理由の一つが、鑑定を行う上で厳しい条件を設定していたことだ。すなわち遺骨の身元特定につながる、記名のある遺品もしくは埋葬記録などがあること、である。

 しかし、激戦地ではそのような資料が遺骨とともに見つかることは極めてまれだ。だから、沖縄や硫黄島などでは遺族らが苦労して遺骨を掘り起こしても、鑑定されないケースが続出した。「条件が厳しすぎる」という批判が根強かった。これを受けて所管の厚生労働省は16年度、沖縄の4地域に限って、部隊記録などからある程度、戦没者の所在地が推定できる場合は、遺品や埋葬記録などがなくても鑑定を行うこととした。さらに翌年度には対象を沖縄の10地域に広げた。

 福岡県昭代村(現柳川市)から出征し、硫黄島で戦死した近藤さんのケースも、上記沖縄の10地域と同じだった。

 つまり毎日新聞の取材によって、資料上で近藤さんの所属部隊と、その部隊が硫黄島のどこに配置されていたかが分かった(島西部の大坂山)。さらに厚労省はその大坂山地区で遺骨を収容しており、かつそのうち26体は焼かれておらず、DNA鑑定が可能な状態であることも判明した。

「沖縄は試行」と繰り返す政府

 近藤さんの遺族は鑑定を希望したが、厚労省は「遺品・埋葬地しばり」を理由に拒んだ。具志堅さんが言うように、私も「差別だ」と感じた。前回(その76)で見たように、毎日新聞がそのいきさつを19年2月18日付の朝刊で報道したところ、国会でこの問題が取り上げられた。参議院厚労委員会では3月14日、川田龍平議員(立憲民主党)が根本匠厚労相に鑑定すべく決断を強く迫った。

 さらに同月22日、参議院予算委員会でもこの記事が取り上げられた。白真勲議員(同)が記事を基に、硫黄島でも遺品なしの鑑定を行うよう迫った。

 八神敦雄・厚労省官房審議官は答える。

 「沖縄では今試行をしておるところでございます。ほかの地域につきましては、沖縄の状況を見てということで考えているところでございます。また、DNA鑑定につきましては、DNA鑑定、例えば犯罪捜査のように現に生存している方とその遺留物というようなものであれば比較的分かるものでございますが、南方の骨でございますと、結構傷んでいて、DNAを抽出しても、例えば欠落をしていてきれいにDNAが取れないというようなことであったり、あるいは、古い遺骨でございます、ご遺族の方との関係が離れていくとなかなかDNAが合うケースが少ないというような、条件が悪いこともございます。そういう中で対象を広げていくということになりますと、同じような程度で可能性があるというような方が複数見付かるというようなこともございます。そういったことも踏まえて、今沖縄で試行している状況を見ながらということで考えておるところでございます」

「やらない理由」をまた説明

 戦没者遺骨のDNA鑑定に後ろ向きな政府に対してしばしばなされる批判は「犯罪捜査などではしばしば行っているのに、なぜ戦没者にはしないのか」という指摘である。犯罪捜査の場合、たとえば犯罪現場に残された容疑者のものとおぼしき髪の毛などの試料と、容疑者…

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