毎日新聞
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<蒟蒻(こんにゃく)に今日は売り勝つ若菜かな>。「人日(じんじつ)」とも呼ばれる七草の節句を迎えた江戸の情景を描いた芭蕉(ばしょう)の句だ。新年7日にセリやナズナなど若菜を食する習慣は平安時代に宮中行事として始まった。江戸時代には五節句の一つとして将軍家の公式行事になり、庶民も七草がゆを食べるようになった▲発祥は中国だ。6世紀に今の湖北省など長江中流域の風俗について記した「荊楚(けいそ)歳時記」に「正月七日を人日となす。七種の菜を以(もっ)て羹(あつもの)をつくる」とある。羹は熱い汁物だ。これが日本に伝わり、七草がゆに変わったらしい▲中国では広東省などの一部に残るだけの食習慣だが、日本では現代まで続いてきた。若菜が豊富に手に入る自然があったからではないか。万葉集にも若菜摘みの歌は多い。日本の風土にぴったりと合ったのだろう▲邪気払いの意味もあった。「唐土(とうど)の鳥が日本の土地へ渡らぬ先に」とはやしことばを唱え、若菜を包丁などでたたく風習が伝わっている。前掲書に人日に現れて害をなす怪鳥の記述があり、これが唐土の鳥らしい▲鳥ではないが、中国・武漢で流行する原因不明の肺炎について厚生労働省が注意を呼び掛けてから1年。日本にも渡ってきた新型コロナウイルスの猛威は収まるところを知らない▲各地から七草出荷のニュースが伝わる。今年はパッケージに「無病息災」の願いを印刷した商品が多いそうだ。再び緊急事態宣言が出される。自宅で七草がゆを味わい、正月休みで疲れた胃腸をいたわることにしたい。
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