場当たり対応の末の「戦略なき発令」 危機管理専門家が見た緊急事態宣言

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緊急事態宣言の発令について記者会見する菅義偉首相の映像を流す街頭ビジョン=東京都新宿区で2021年1月7日午後6時25分、宮武祐希撮影
緊急事態宣言の発令について記者会見する菅義偉首相の映像を流す街頭ビジョン=東京都新宿区で2021年1月7日午後6時25分、宮武祐希撮影

 新型コロナウイルスの感染者増加と医療体制の逼迫(ひっぱく)を受け、政府は7日、首都圏の1都3県を対象に、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」の再発令を決定した。昨年末まで発令に慎重な姿勢を示してきた菅義偉首相の方針転換を、危機管理の専門家はどう見ているのか。日本大危機管理学部の福田充教授に聞いた。【塩田彩/統合デジタル取材センター】

危機管理と呼べない政府の対応

 ――昨年秋の感染再拡大から今回の緊急事態宣言発令決定までの政府の動きを、危機管理という視点からどのように評価していますか。

 ◆本来であれば、緊急事態宣言のような強い対策は、タイミングを含めて、政府が戦略的、主体的に判断すべきものです。菅首相は、昨年末までは経済を回すことを優先し、緊急事態宣言の発令には後ろ向きだと報道されていました。結局、世論の動きと1都3県の知事の要請を受け、押し切られる形で発令に踏み切ったように見えます。

 経済を回すことを優先するならば、感染再拡大を見越し、医療崩壊が起きないよう医療キャパシティーを拡充して備え、さらに一定程度の死者数は受容してほしいと、国民に責任を持って説明し続けるべきでした。そうした準備も国民への説得も行わないまま、のらりくらりと「GoToキャンペーン」を続け、感染者数が増え、病床も満床になってから、結局、方針を変えて緊急事態宣言を出す。こうした対応は、危機管理とは呼べません。

 さらに、緊急事態宣言の内容も極めて中途半端だと思います。飲食店の営業短縮や夜間のみの外出自粛、テレワークの推奨などに限定し、人との接触8割減という目標を掲げた昨年4月の宣言時のような包括的な自粛要請はとっていません。感染症の危機管理対策の原則は「強く、早く、短く」です。感染拡大の早い段階で「ロックダウン(都市封鎖)」のような強い規制を短い期間に限って実施する。そうでなければ、経済への打撃や、社会不安や混乱といったダメージが拡大してしまいます。

 安倍晋三政権時から続いていることですが、日本政府は、新型コロナウイルス危機にどう対処するのか、方針と戦略が全くなく、ふらふらと場当たり的に対応しているようにしか見えない。そこに大きな問題があると感じています。

 ――場当たり的な政府対応の背景には何があるのでしょうか。

 ◆私は、新型コロナ対策は、原則としてハード管理戦略とソフト管理戦略のどちらかの方針を打ち立てることが重要だと考えています。経済活動を犠牲にしてロックダウンのような強い私権制限を伴う戦略がハード管理戦略、逆にスウェーデンのようになるべく規制をかけず集団免疫の獲得を目指す代わりに、一定の死者数が積み上がることを受け入れるのがソフト管理戦略です。

 日本では、強い私権制限を伴うハード戦略は、憲法…

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