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#最後の1年

新型コロナに揺れる学生スポーツ界。最高学年の選手は無念や戸惑いを抱きながら「最後の1年」を過ごしています。

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「甲子園」中止のまま巣立つ女子部員の新たな道 友情のパスを世界へ

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フロアバレーボールを通じて世界を広げる坂本奈々美=東京都文京区の筑波大付属視覚特別支援学校で2020年12月21日午後5時33分、谷口拓未撮影
フロアバレーボールを通じて世界を広げる坂本奈々美=東京都文京区の筑波大付属視覚特別支援学校で2020年12月21日午後5時33分、谷口拓未撮影

 師走の体育館はフロアバレーボール部員で熱を帯びていた。東京都文京区の筑波大付属視覚特別支援学校。間もなく巣立つ全盲の高等部3年、坂本奈々美(17)もその輪の中にいた。部の同期4人の中で唯一の女子部員として奮闘してきた。新型コロナウイルスの影響でとうとう集大成の舞台は訪れなかったが、競技を通じて活動の場を広げてきた歩みは色あせない。

 仲間と流す汗は心地よかった。ボールを打ち込むドンという重い音と「よっしゃー」との気迫あふれる声が交錯する。昨年12月下旬、受験勉強のためしばらく練習を離れていた坂本の姿が体育館にあった。全国優勝の夢は後輩たちに託すことになり、卒業まで同期と共に練習相手を買って出た。感染対策のため手洗い、消毒、マスク着用を徹底し、1時間足らずの短時間練習。坂本は「目の前に友達がいて一緒にプレーができる。飛んで回りたくなるくらいうれしい」とほほ笑んだ。

全国優勝まであと一歩でコロナ襲来

 大阪市東淀川区出身。生後間もなく網膜に悪性腫瘍ができる「網膜芽細胞腫」と診断された。2歳で両目を摘出し、義眼を入れた。地元の大阪府立大阪北視覚支援学校の小学部に進んだ。卒業時を含め4年間担任だった上田朋子教諭(39)から「多様な人と交流し、さまざまなことを経験できる環境に飛び込んでほしい」と勧められた。中学部からは規模の大きな筑波大付属視覚特別支援学校へ進むことを決断した。親元を離れて上京し、寄宿舎での共同生活を始めた。

 そこでフロアバレーボールを本格的に始めた。視覚障害者と健常者が一緒に楽しめる日本発祥の競技で、コートの広さやボールの大きさはバレーボールと同じ。ボールを打って床上30センチに張られたネットの下をくぐらせ、守備の間を抜いて得点し合う。前衛3人はアイマスクを着用し、弱視の選手らが務める後衛3人の指示やボールの音を頼りにプレーする。

 同校は弱視や全盲の選手が男女混合でチームを構成する。「全員が一緒に感覚を研ぎ澄ませ、一つのチームになれる」と坂本は魅力を感じたという。新しい生活環境にも慣れ、競技に熱中した。負けん気の強さで、前衛として相手の強打にブロックで対抗。高等部に進むと、主力へ…

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