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あしたに、ちゃれんじ

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「出会う場」どんな形でも 医療支援に取り組む清水健さん=中川悠 /大阪

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新しい一年に向けて夢を語る清水健さん=大阪市中央区で 拡大
新しい一年に向けて夢を語る清水健さん=大阪市中央区で

 「今度は実際にお会いできたらいいですね!」「頑張れ、シミケン!」。パソコンの向こうから温かい言葉が届いた。

 カメラを前に熱を込めて語りかけていたのは、読売テレビのアナウンサーとして親しまれた清水健さん(44)。「本当は会場に集まる皆さんと直接会って言葉を伝えたいんですけどね」。オンライン講演会を終えた表情は明るいが、かすかに悔しさもにじんでいた。

 2017年にテレビ局を退社した清水さんは今「清水健基金」の代表として全国を講演で回り、支援のお金を集め、入院施設の充実・がん撲滅・難病対策などに取り組む団体や個人に届ける活動をしている。原点は亡くなった妻への思い。清水さんは13年に奈緒さんと結婚。奈緒さんは妊娠中に乳がんと診断された。14年に長男が誕生したが、15年に奈緒さんを29歳という若さで失った。出産後3カ月、結婚生活はわずか1年9カ月だった。

 清水さんは「『ありがとう』という、たった5文字の言葉を大切にしたい」と話す。闘病中の妻に「ありがとう」を言ってしまうと「もうだめなん?」と思われるかもしれなかった。意識がなくなってから初めて言えたけれど、妻に届いたかは分からない。講演では一貫して「家族や仲間との絆を大切にしながら前へ進むことの意味」などについて語り続けている。

 16年以降、多い年は年間80回以上の講演やイベントに積極的に参加してきた。しかし、コロナウイルス拡大以降は講演会が次々に中止に。それでも清水さんの声を聞きたいとの依頼は途絶えず、対面にこだわってきた中での苦渋の決断としてオンラインでの講演会を始めた。

 「社会活動にとって集まれないのは相当なダメージです」。清水さんが応援している団体も彼の団体も社会の中ではとても重要だが、普段はなかなか興味を持ってもらえないテーマ。一度会えなくなると、人々の心はすぐに離れていく。まだまだ続くコロナ禍の中でオンラインを超えられるものは何か。清水さんは迷いの中にいる。

 一方で発見もあった。他団体と協力して地域医療向けにマスクを送った時、インターネットの力で支援先から「いつもの3倍」というお礼のメッセージが届いた。難病の子どもが以前は感染予防のマスク姿をクラスメートにからかわれたが、今はマスクが当然でいじめがなくなったとも聞いた。人の心の痛みに気付くきっかけになればと思う。

 「どんな形でも『会える』ってとても大切なこと」。そう語る清水さんの元には、同じ思いを持つ人たちが集まる。多くの人たちにエールを送る彼も誰かに支えられて生きている。新しい年に「シミケン」はどんな動きを見せてくれるのか。「オンラインの先にあるもの。こんな時だからこそみんなで知恵を絞って『出会える場所』を作り、分かち合いたい」。その瞳の中にキラリと光る希望を感じた。<次回は2月5日掲載予定>

      ◇

 一般社団法人清水健基金(大阪市中央区、電話06・4309・6872)。詳細はホームページ。


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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