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ソウルの地裁がきのう、元慰安婦への賠償を日本政府に命じた。徴用工問題で極めて悪化している日韓関係の改善を見通すことは、さらに難しくなった。
裁判の焦点は、慣習国際法上の「主権免除」を認めるかどうかだった。国家の行為は外国の裁判所で裁かれないという原則である。
判決は慰安婦制度について「反人道的な犯罪行為」であり、主権免除の例外だと認定した。
国際司法裁判所(ICJ)が反人道的であることを理由に例外と認定してきたのは、拷問とジェノサイド(大量虐殺)である。
慰安婦制度でも例外を認めるというのなら、新たな判断ということになる。判決が、そのために必要となる慎重な検討を尽くしているのか疑問だ。
人権被害の救済を重視する国際法の流れは、第二次世界大戦への反省から生まれたものだ。大戦中の行為にまでさかのぼって主権免除の例外を認め、賠償を命じることには無理があるのではないか。
判決が、慰安婦問題での日本の取り組みを無視していることも見過ごせない。
日本は、国家としての責任を認めて謝罪してきた。1990年代に始まったアジア女性基金の事業では、歴代首相からの「おわびの手紙」が元慰安婦に手渡されてもいる。
2015年には最終的な解決を図るための日韓合意が結ばれた。元慰安婦の救済を優先させるために両国が歩み寄った成果だった。国家間の明確な合意を、内政事情で一方的にないがしろにすることは許されない。
日本政府は今回の訴訟に、主権免除を理由に参加しなかった。控訴しなければ、判決は確定する。
韓国にある日本の国有資産差し押さえという事態に発展すれば、日本の対韓世論はいっそう冷え込むだろう。
日韓両国は近年、韓国側の司法判断を契機に相互不信を募らせている。こうした状況に歯止めをかけねばならない。
厳しさを増す安全保障環境や新型コロナウイルス収束後の経済復興を考えれば、日韓が協力することは互いの国益につながる。両国の政治が、関係安定化の前面に立つ時である。
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