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今週の本棚・なつかしい一冊

佐藤優・選 『世界の共同主観的存在構造』=廣松渉・著

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イラスト・寄藤文平
イラスト・寄藤文平

 (岩波文庫・1452円)

 私が同志社大学神学部の2回生のとき(1980年)、神学部自治会(ノンセクトの新左翼系)の友人、滝田敏幸君(千葉県議会議員・自民党)、大山修司君(日本基督教団膳所(ぜぜ)教会牧師)たちと読書会を行い熱中して読んだ本だ。京都の新左翼系学生たちの間で、廣松渉(ひろまつわたる)氏の著作は古典的地位を占めていた。ただし、私たち神学生は廣松氏の著作を革命論としてではなく、無神論者の教科書として読んだ。逆説的だが、私たちはこの本を精読することによってイエス・キリストという人間になった神の存在に対する確信を強めるようになった。廣松氏は縄を蛇と勘違いした人の例を挙げる。

 <さて、「友人が縄を蛇として錯視している」「彼は私が彼の錯覚を察知したことに気付いている」という二様の意識事態において、反省的にとらえかえせば、能知的な主体はいずれも私である。とはいえ、再確認するまでもなく、﹅私としての私にとっては縄はあくまでも縄であり、友人にとってはそれは端的に蛇なのであるから、蛇としての﹅錯視ということは、私が友人の立場を観念的に扮技(ふんぎ)しつつしかも自己にとどまってい…

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