今こそ「いざという時」 企業の内部留保を回すべきだ 水野和夫教授が危機を語る

新型コロナウイルスの感染拡大で、サービス業を中心に仕事を失う人が増える一方、影響を受けず逆に収入を増やしている人々もいる。法政大の水野和夫教授(グローバル経済論)に、新型コロナがもたらす格差などについて話を聞いた。【聞き手・岡大介】
――新型コロナによって格差は広がっていますか。
◆格差はどう考えても広がっている。人との接触を避けオンラインで業務ができる人々は、比較的打撃が小さい。それらの人々は元々正社員が多く、残業代などが多少減ってもそれほど影響はない。一方で、対面でサービスする飲食などの業種はもともと非正規社員が多く、新型コロナで職を失い収入がゼロになるケースもある。看護師も、最前線で頑張っているのに新型コロナで病院が経営難になりボーナスが減るという矛盾が起きている。格差自体は以前から存在していたが、コロナで拡大している。
――日本で格差が広がり始めたのはいつごろからでしょう。
◆1990年代以降だと考えている。特定の業種に限定されていた派遣労働が99年に原則自由化された。企業は、派遣労働者や非正規労働者を雇用の調整弁として使い、人件費を固定費から変動費に変えることに成功した。削減した人件費は株主への配当金の原資となった。同じ時期に「金融ビッグバン」と呼ばれる金融制度改革も行われ、国境を超えてお金が動くようになり株価が乱高下しやすくなった。普通の人々のほとんどは資産を預金という形で保有しており、低金利で増えない状況だ。だが、余裕のある富裕層は株の配当や株価上昇で資産を増やしている。
世界的に経済成長は止まりつつある。そうなると、富を得るには誰かから奪わなければいけない。昔は南の途上国から石油や商品作物など資源を奪っていたが、途上国もそれを許さなくなり、先進国ではいわゆる「中間層」がそのターゲットになった。日本でそれを象徴するのが、派遣労働の解禁だ。
――格差拡大で懸念される影響は。
◆日本で格差拡大が顕著になり始めて、すでに四半世紀たった。つまり1世代に相当する。それだけ格差拡大が続くと、…
この記事は有料記事です。
残り1495文字(全文2357文字)
時系列で見る
-
東京で新たに1494人感染確認 日曜として過去最多 重症者128人
756日前 -
序二段力士・琴貫鉄がコロナ理由に引退 「両国まで行き相撲取るのが怖い」
756日前 -
コロナ禍でひとり親の苦境鮮明に 湯浅誠氏が懸念する「今後の復興格差」
756日前 -
年末年始のコロナ感染 広島市は「家庭内」が半数 「自宅療養より施設利用を」
756日前 -
36キロ減量、ゆりやんレトリィバァさん コロナ自粛で「自分を大事に」
756日前 -
「よりよい自分、世界に」 新成人、コロナ後への誓い 千葉・御宿
756日前 -
菅首相、情報減でストレス? 支える二階、林、森山「3人組」と面会減少
756日前 -
「コロナ虫歯が増加」 小児科、歯科医らが子どもへの影響を共有 山梨
756日前 -
大宮駅前、やや少ない人出 「宣言」再発令され初の週末 埼玉
756日前 -
今こそ「いざという時」 企業の内部留保を回すべきだ 水野和夫教授が危機を語る
756日前 -
110番、2010年以降で最少 新型コロナで外出減が影響か 昨年1〜11月
757日前 -
コロナ国内死者4000人 18日間で1000人増、ペース加速
757日前 -
新型コロナ 「緊急事態」要望相次ぐ 大阪、独自に防止策
757日前 -
内部留保、今こそ還元=法政大教授・水野和夫さん
757日前 -
都心に人波残る 宣言直後3連休、地方は閑散
757日前 -
新型コロナ 全国新たに7775人
757日前 -
観光業再び苦境 はとバス、ツアー中止
757日前 -
新型コロナ 自宅療養中死亡 神奈川知事陳謝「対応に落ち度」
757日前 -
第2部 パンデミックと社会/6 中間層転落、開く格差
757日前