<文化の森 Bunka no mori>
映像化された鷗外作品は多い。「雁」「舞姫」などがあるが、最も有名なのは、ベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した溝口健二監督の「山椒大夫」だろう。
許されぬ殉死を巡る悲劇を描いた「阿部一族」も何度か映像化されている。監督によって原作の切り取り方が違って、比較しながら観(み)ると非常に面白い。
一九三八年公開、熊谷久虎監督の映画は「昼寝を終えて腹を切りに行く男」のエピソードからはじまる。ここは原作でも非常に印象的な部分だ。釣り忍につけた風鈴がかすかに鳴り、手水(ちょうず)鉢(ばち)の柄杓(ひしゃく)にはやんまが止まっている。そんな穏やかな日、妻が昼寝をしている夫を起こす。目覚めた男は「ひどく気分が好(よ)うなった」と言い、「心静かに支度をして」、「腹を切りに往(い)った」のだ。
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