毎日新聞
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アフリカ各地でイスラム過激派組織が勢力を拡大し続けている。活動の中心が中東からアフリカに移りつつあり、テロも増加。各国政府は取り締まりに力を入れるが、軍や治安機関の能力に限界があり、有効策を打ち出せていない。
ナイジェリア北部カツィナ州では昨年12月、寄宿学校が襲撃され、男子生徒344人が拉致される事件が起きた。過激派組織ボコ・ハラムが「非イスラム教的な行為を戒めるため」とする犯行声明を出した。その後、生徒らは解放された。
ボコ・ハラムは2014年にも女子生徒約270人を拉致。この時の現場は本拠地の同国北東部だったが、今回はその約600キロ西で、勢力拡大を印象付けた。
地元紙「トラスト」は関係者の話として、ボコ・ハラム系の組織と地元の犯罪グループが連携し、多額の身代金や拘束中のボコ・ハラム幹部の釈放を狙っていたと指摘する。ただ拉致した生徒の数が多かったため、長期にわたる身柄拘束を断念したとの見方がある。
ボコ・ハラムは北東部ボルノ州で昨年11月、農民ら40人以上を惨殺しており、国民の間で政府の治安対策への不満が高まっている。
一方、ブルキナファソ、マリ、ニジェール3国の国境周辺で活動を活発化させているのが「大サハラのイスラム国」(ISGS)だ。NGO「武力紛争位置事件データプロジェクト」の集計によると、20年はISGSが絡む事件で軍や市民、ISGS兵士など計2000人以上が死亡。19年から倍以上増えたという。
ニジェールでは2日に二つの村がイスラム過激派に相次いで襲撃され、住民約100人が虐殺されたとの報道もある。犯行声明は出ていないが、ISGSの関与も指摘されている。
米国防総省が管轄するアフリカ戦略研究センターによると、ISGSは15年に国際テロ組織アルカイダ系の過激派から分派して発足した。西サハラ出身の男がリーダーで、メンバーは支持者を含めて数百人と少ないが、現地で産出する金などを資金源に勢力を拡大。貧しい若者らをメンバーに勧誘している。
20年1月にはニジェール軍の駐屯地を襲って兵士89人を殺害した。過激派対策で西アフリカに駐留する旧宗主国フランスの部隊が空爆などで対抗している。
また、モザンビーク北部のカボデルガド州でも17年ごろから過激派組織「イスラム国」(IS)系の組織による紛争が続いている。組織の実態には不明な点が多いが、ニュシ大統領は昨年12月、住民57万人が家を追われて避難していると公表した。ロイター通信によると旧宗主国ポルトガルがモザンビーク軍の訓練に協力するほか、北隣のタンザニア軍もモザンビーク軍と共同作戦を行う方針だ。
同州沖には大規模な天然ガス田が確認されており、日系企業も参加する液化天然ガス(LNG)精製施設の計画が進んでいる。計画を主導するフランスの石油大手トタルは昨年12月末、治安悪化を理由に一部のスタッフを現地から撤収させており、計画への影響も懸念されている。
このほかソマリアやマリ北部などでもイスラム過激派が強い勢力を保っている。
こうしたアフリカの状況について、国際シンクタンク「経済平和研究所」(IEP)は20年11月発表の報告書で、IS系の組織は近年、活動の中心を中東からサハラ砂漠以南の「サブサハラ」地域の国に移していると指摘。このためテロが増加し、19年に世界中で起きたIS系組織によるテロ攻撃の約4割がサブサハラの国に集中したという。
また、米国務省対テロ対策調整官のネイサン・セイルズ氏は英BBCの取材に対し、IS系だけでなく、アルカイダ系組織もシリアやイラクからアフリカに活動の中心を移していると強調。「テロとの戦いにおける次の主戦場はアフリカだ」としている。【平野光芳(ヨハネスブルク)、川上珠実】
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