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東京、埼玉、山梨の1都2県にまたがる雲取山(2017メートル)が熱い視線を浴びている。人気漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」の出版元が販売する公式ファンブックで主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう)らの出身地と紹介され、2019年秋ごろから雲取山周辺を訪れる鬼滅ファンが目立つようになった。
雲取山は日本百名山の一つに数えられる東京都内で最高峰の山で、都心からアクセスしやすく紅葉シーズンは多くの登山者でにぎわう。和歌山県の大雲取山や小雲取山が名前の由来とされ、雲取は「雲を手に取ることができるほど高い山」という意味を持つ。
鬼滅ファンの“聖地巡礼”に沸くのは、雲取山の登山口の一つがある、ふもとの山梨県丹波山村だ。村中心部の「道の駅たばやま」では、従業員らが炭治郎の羽織と同じ市松模様の法被姿で観光客を出迎える。「鬼滅ブームに乗って村をPRしたい」と、道の駅では駐車場や登山口につながる林道沿いなどに「丹波山村 雲取山」とデザインされたのぼり旗を立てたり、売店で鬼滅関連グッズを販売したりもしている。
元村教育長で道の駅駅長の野崎喜久美さん(59)は鬼滅ファンの来訪について「作品には人を思いやる場面がたくさん出てくる。描かれている温かい雰囲気は村と重なるところもあるのではないか」と歓迎している。
さらに炭治郎と丹波山村には共通点がある。炭焼きだ。作品では炭治郎が木炭を担いで山を下り、町に売りに出かける場面が描かれているが、村はかつて「炭焼きの村」と呼ばれ、昭和中期まで木炭作りが盛んだった。1981年に村が発行した村誌によると、出荷量がピークを迎えた55年ごろには全戸の約半数が炭焼きに従事していたという。
かつて炭焼きをしていた木下勲さん(89)は「40~50キロくらいの炭を背負って、1時間半くらいかけて山を下りていた」と振り返る。山林で伐採した木を石窯で焼いて木炭を作り、俵に詰めて下山する。木炭は農閑期の貴重な収入源となっていたという。「体力と根気のいる仕事だったが、充実していた」と懐かしむ。
木炭は燃料として家庭などでも広く使われていたが、石油やガスの普及に伴って需要が落ち込み、村の炭焼きは次々と廃業していった。村の担当者は「『鬼滅の刃』を通して失われつつある文化に興味をもってもらえたら、ありがたい」と炭焼きが脚光を浴びることを喜ぶ。【金子昇太】
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