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大阪市天王寺動物園で2020年11月、ホッキョクグマの赤ちゃん2頭が誕生した。天王寺動物園では約6年ぶりとなる、待ちに待った出産だった。その舞台裏では、繊細さが求められるホッキョクグマの出産にあたる飼育員らの周到な準備と日々の作業の積み重ねがあった。
11月26日午前9時ごろ、飼育員の油家謙二さん(48)が出勤すると、獣舎にいるホッキョクグマのイッちゃん(雌、7歳)の監視モニターから、「ギャー、ギャー」と大きな泣き声が聞こえた。聞き覚えのない声に一瞬、戸惑ったが、すぐに赤ちゃんが生まれたのだと察知した。獣医を呼んで映像をさかのぼると、前日の夜に出産していたことが確認できた。
父親のゴーゴ(雄、16歳)とイッちゃんの間に生まれた赤ちゃんは2頭で、イッちゃんは初産となった。油家さんは「ほっとしたと共に、これからが勝負だと引き締まる思いがした」と振り返る。
イッちゃんに変化がみられたのは19年の冬ごろから。普段以上に積極的に遊ぶようになるなど、「発情期の兆候ではないかと感じた」という。20年2月からゴーゴと同居を始め、3月以降に複数回の交尾を確認した。
ホッキョクグマには明確に妊娠を判断する基準がなく、実際に身ごもっているかどうか分からなかったが、飼育員らは妊娠を前提に準備を始めた。野生では雪に巣穴を掘って出産するため、寝室を板で囲ってわらを敷きつめるなど、自然に近い環境で出産に専念できるように用意した。出産後はしばらく食事をせずに子育てをする特徴があるため、夏ごろからはイッちゃんの餌の量を増やして脂肪を蓄えさせた。
出産を控えた母親は神経質になるため、10月下旬から展示を中止して飼育員らも近づかず、監視カメラを設置して様子を確認する作業を続けた。
同園では、これまで13頭のホッキョクグマが生まれたが、無事におとなまで育ったのは5頭で、今後も慎重に経過を見守る必要がある。油家さんは「イッちゃんも初産で、これから体力を保てるかが重要。イッちゃんの力を信じてしっかりサポートしていきたい」と話す。
赤ちゃんの一般公開は未定だが、順調にいけば今春にも公開できる可能性があるという。牧慎一郎園長は「自分たちが準備してきたことを信じて親子を見守っていきたい」と期待を込めている。【澤俊太郎】
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