世界の関心が内向き「難民は最も脆弱な立場」 平和賞ナディア・ムラドさん

新型コロナウイルスにより、世界の難民・避難民はどのような状況に追い込まれたのだろうか。過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘員に性暴力を受けた後、避難民のキャンプで暮らした経験を持つ2018年のノーベル平和賞受賞者、ナディア・ムラドさん(27)が書面インタビューに応じた。【中村紬葵】
――キャンプではどのような気持ちで暮らしていましたか。
◆将来に望みを持ち続けるのは難しい場所だ。私が滞在したキャンプは故郷から歩いてわずか4時間の距離だった。すぐ近くに故郷があるのに、帰ることができない。とてもつらかった。
――難民キャンプでは新型コロナはどのような脅威になりますか。
◆キャンプではパンデミック(世界的大流行)が起きる前でさえ、きれいな水や公衆衛生、ヘルスケアを欠いていた。ひどい生活環境は難民らの絶望に追い打ちをかける。コロナ禍の今、衛生的な生活ができないことはとても悲惨なことだ。
――世界各国は自国民のための対策をとることに精いっぱいで、関心が内向きになっているように思います。この状況をどう考えますか。
◆新型コロナに対処するためとはいえ、各国の関心が内向きになることはとても危険だ。このような危機では、難民らは最も脆弱(ぜいじゃく)な立場に追いやられる。ソーシャルディスタンスを保つ対策を取ったり、マスクやワクチンを届けたりする政府がないからだ。難民らは受け入れ国や国際的な人道機関の慈悲に頼っている。各国の支援が減ると、難民らを支える国際的なシステムが崩壊し、難民らは苦しむことになる。世界の指導者が脆弱な立場に立たされた人々を思い起こし、彼らの健康を後回しにしないことが極めて重要だ。このウイルスは世界中のコミュニティーから根絶されるまで、人々を苦しませ続けるのだから。
コロナで虐待被害者支援の資金、転用
――今回のパンデミックでは、女性に対する暴力や虐待が急激に増加したことが報告されています。
◆ロックダウン(都市封鎖)の間、世界中で虐待する加害者と被害者が一緒に閉じ込められた。また、新型コロナを受けて、被害者支援に充てられていた資源や資金は別のところに転用された。世界には、被害者を支援する多くの市民団体があり、被害者自身が主導している団体もある。世界のリーダーは、このような団体が活動を続けていけるように資金提供を増やすべきだ。
――危機において女性への暴力を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。
◆問題の根源に対処する必要があると思う。まず、…
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