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島の小さな暮らしが教えてくれる豊かさ 清水浩史さん「不思議な島旅」刊行

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「不思議な島旅」を刊行した清水浩史さん。沖縄県多良間村の水納島で=本人提供
「不思議な島旅」を刊行した清水浩史さん。沖縄県多良間村の水納島で=本人提供

 自分の日常を揺るがすものとの出合い――。編集者・ライターで、これまで約300の島を訪れた清水浩史さんは、旅の面白さをそう語る。島々の個性は、差異が優劣ではないこと、自分が今いる場所が絶対ではないことを教えてくれるという。新著「不思議な島旅 千年残したい日本の離島の風景」(朝日新書)では、人口1人の島の暮らしや、離島で育まれた独自の風習に焦点を当て、都会の日常生活で忘れられがちな、自然と人の営みの豊かさを浮かび上がらせている。

日本の有人島約400、無人島6000以上

 日本には有人島が約400、無人島が6000以上あるとされる。清水さんのまとめでは、戦後に無人化した島が138あり、その多くが高度経済成長期の離島という。「八丈小島(東京都)や臥蛇島(がじゃじま、鹿児島県)の集団離島が有名ですが、人知れず無人化した島もある。今は、島での暮らしを知る人に話を聞けるぎりぎりの時期なんです」

 一方、有人島も人口減少と深刻な高齢化に直面している。清水さんが2017、18年に訪れた長崎県の黒島、六島は、その後、人口が1人になった。「人がいなくなれば、島の文化や歴史を知る手がかりが失われてしまう。変化の激しさを目の当たりにし、今のうちに記録しておきたいと思った」と本書執筆の動機を語る。

 実際に人口1人になった島々を訪ねて目にした光景は、事前に想像していたものと少し違ったという。住み慣れた土地で自然と向き合って暮らす日々は、穏やかで満ち足りているように見えた。墓地を守り、畑を耕し、島の歴史を語り継ぐ。清水さんの筆は、そうした暮らしに寄り添う。「島の暮らしを見つめているうちに、移り変わりの悲しさだけでなく、今あるものの豊かさも伝えたいと思うようになったんです」

目の前にあるものを慈しむ

 清水さんは大阪府出身。中学生の時に青春18きっぷで旅行を始め、高校に入ると寝袋を担いで国内各地を回るように。大学卒業後、テレビ局に就職したものの、30歳で退職。出版社勤務などを経て、フリーの編集者・ライターとなった。

 「東京に住み、都会の利便性を私も享受していますが、どこか乾いた気持ちがあります。お金を稼いで消費するサイクルから降りられない。程度の差こそあれ、そこにむなしさを感じる人は少なくないのではないでし…

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