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東京へ ともに歩む

毎日新聞

2020年11月、8カ月ぶりの国際試合となった女子ワールドカップ(中国・山東省威海市)に出場した伊藤美誠=©ITTF/Rémy Gros

アスリート交差点2020

今を楽しむ 「命懸け」だった38日間の中国遠征=卓球・伊藤美誠

 昨年は新型コロナウイルスの影響が大きかった1年でしたが、私にとって忘れられない出来事となったのが中国遠征です。2020年11月、8カ月ぶりに国際卓球連盟(ITTF)主催の試合が再開。女子ワールドカップ(W杯、山東省威海市)とITTFファイナル(河南省鄭州市)に出場するためでした。ただ遠征期間は隔離措置も必要なため、38日間に及びました。

     出発前に「命懸けで中国に行く」と言ったのですが、全てが初めての経験でした。上海の空港に到着したら本当に驚きました。どこにも行かないように、誰とも会わないように動線が決まっていて、白い防護服を着た3、4人の職員に囲まれて移動し、空港内でPCR検査を受けました。

     PCR検査はその後、2、3日に1回受けることになりましたが、そのたびに持ち物を含めて全て消毒されるので、頭では必要なことと分かっているのですが、何だか自分がばい菌になったようで正直嫌な気持ちがしました。だから、検査の時に検査員の方が荷物を運んでくれたり、笑顔を向けてくれたりするだけで気持ちが安らぎました。

    2020年11月、8カ月ぶりの国際試合となった女子ワールドカップ(中国・山東省威海市)で3位となった伊藤美誠(中央が優勝した陳夢、左が準優勝の孫穎莎)=©ITTF/Rémy Gros

     まず空港近くのホテルでは4日間、密室状態。外の空気は吸えない感じで、ずっと部屋に一人でいました。食事が運ばれる時に検温もするのですが、その時に向かいの部屋もドアが開くので母の姿がちらりと見えるぐらい。隔離期間中に20歳の誕生日を迎えたのですが、最初に会ったのも防護服を着たスタッフの方でした。私はしゃべるのが大好きなので、この4日間は本当に苦しかったです。だから、誕生日にSNS(ネット交流サービス)でいろんな方々からメッセージを頂いて生き返ったような気がしました。

     練習できるようになったのは1週間以上たってから。打ち合えるだけで楽しかったです。試合はどちらも無観客。拍手などの応援がないので変な感じでした。盛り上がる雰囲気が好きなので、お客さんがいてくれたほうがいいですが、感染対策のことを考えると仕方ないのかなと思います。映像を通して日本で応援してくれているのは分かっていたので、あまり気になりませんでした。

     遠征では、うれしい驚きもありました。練習相手がいなくて困っていたら、W杯後に世界ランキング1位の陳夢、同2位で私と同じ20歳の孫穎莎の両中国選手らと打ち合う時間をもらえました。陳選手とは2時間ほど打ち合いましたが、最後まで息が上がることがなくてすごいなと思いました。そして2人とも本当にミスが少ない。緊張感のあるいい練習ができて楽しかったし、自分が強くなった気がしました。陳選手は穏やか、孫選手は飾り気のない感じで、普段の試合とは違う2人の人柄を知ることができたのもよかったです。普段の試合以上に疲れる遠征でしたが、それでも行ってよかったなと思います。(あすはカヌー・羽根田卓也です)

    いとう・みま

     静岡県磐田市出身。2015年、ツアー史上最年少(当時)の14歳152日で優勝。16年リオデジャネイロ五輪団体銅メダル。18、19年全日本選手権3冠達成。20年1月に東京五輪代表に決定。スターツ所属。20歳。