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平松 洋子・評『寿町のひとびと』山田清機・著

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どうしようもない弱さも、なけなしの強さも受け皿に

◆『寿町のひとびと』山田清機・著(朝日新聞出版/税別1800円)

 横浜の寿町(ことぶきちょう)には何度か行ったことがある。空き地に建てた巨大なテント小屋での野外演劇だった。町に入るなり、肌を通じて感じた空気の変化はいまも忘れない。

 寿町は東京の山谷(さんや)、大阪の西成と並ぶドヤ街である。ドヤとは、日雇い労働者が寝泊まりする簡易宿泊所。戦後、町が進駐軍に接収、十年後に解除されると港湾労働者が流入、ドヤが建設されて現在にいたる。中華街や元町、みなとみらい地区など横浜の一等地と目と鼻の先だ。

「ハマのドヤ街」は、神奈川県の横浜にぽっかり浮かぶ異界なのか。住人たちは、市民とは一線を画する「あちら側」に属するのか。これらの問いに答えるべく、著者は六年の歳月を取材に費やす。本書は、その賜物(たまもの)としての、魂のノンフィクション。町に流れる猥雑(わいざつ)な匂い、人間の声や動き、息遣い……行間から、寿町とそこに暮らす人間が重層的に立ち現れ、しだいに日本社会のありようが焙(あぶ)り出されてゆ…

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