昨年12月、オーストラリアで探査機はやぶさ2のカプセルの回収作業に当たった橘省吾・東京大宇宙惑星科学機構教授(宇宙化学)からの寄稿の2回目は、現地での実験室設営の苦労、そしてカプセルと6年ぶりに再会したときの光景がつづられている。カプセル帰還から日本へ出発するまでの長い2日間、カプセルの中身が分からない中、チームのメンバーはどんな思いで作業を進めたのだろうか。
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到着翌日の昨年11月17日から、カプセルが着地する予定となっている豪軍の「ウーメラ立ち入り制限区域(WPA)」内での活動が始まりました。私たちサンプラーチームは、帰還したカプセルを扱う実験室の設営に着手しました。床や壁、頭上の蛍光灯などを掃除し、ちりが入らないような清浄空間を作り、その中に、カプセルのサンプルコンテナを清掃するための作業テーブルや、日本から送った顕微鏡やガス採取装置などを設置しました。簡易的ではありますが、立派な作業環境が出来上がりました。
予期しないトラブルもいろいろありました。そのひとつはガやカメムシなど昆虫の大量発生でした。「虫たち」はこちらの願いを聞き入れてくれず、清浄空間に隙間(すきま)から入ってきてしまいます。毎朝、最初の仕事は虫の駆除になりました。それでも豪州の皆さんの力強い助けに支えられ、サンプラーチームの作業では、特にオーストラリア国立大のトレバー・アイルランド教授に助けられ、装置の起動や作業リハーサルをこなしていきました。
カプセル帰還前日、12月5日午後になると、私たちは設営した実験室に入り、道具や手順の最終確認をしました。そこへ、日本から…
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